ジョン王は英国史上まれに見る無能と評判の王様でした。
16世紀の文豪シェイクスピアには「ジョン王」という芝居があります。どんなことにも題材を見出す、さすがシェイクスピア。
日本での、ジョン王の舞台が上演されています。小栗旬が出演するジョン王の宣伝予告がネットで配信中です。
芝居の口コミではどうでしょうか?
芝居のあらすじも載せました、ぜひ最後までお読みいただければと思います。
ジョン王が登場する映画といえば「ロビン・フッド」です。痛快時代劇アクションですが、ジョン王の悪役ぶりが映画にスリル感を与えています。
またここ10年ほど前ですが、ジョン王を扱った映画があります。ここでも悪役なのでしょうか?大して話題になった映画でもありませんが、ジョン王のまた違う面が見られるかもしれません。
「ジョン王」のシェイクスピア劇 日本で上演、小栗旬出演に期待が
最近の日本のシェイクスピア上演で、「ジョン王」が話題です!コロナで上演が延び延びになっていた、吉田鋼太郎の演出・出演の芝居です。
吉田鋼太郎は「ジョン王」を演じるのではなく、フランスのフィリップ王を演じます。が、こちらの役は、出演者側の都合で変わっており、吉田鋼太郎さんが演じる場合もあるようですよ!
もう一つ、先日の上演が、WOWOWオンデマンドで期間限定で見られるようになりました。2023年2月24日(金)13:30〜26日(日)12:59の間です。
有料なのですが、もしかしたら試聴期間なんか取り入れらば、入会しなくても見れるかもしれない!
小栗旬の役どころは私生児フィリップです!宣伝のポスターでは小栗旬のフィリップがメインで写っています。
小栗旬といえば、今NHK大河ドラマでどんどん変わりゆく北条義時を演じてその演技力に注目されています。
「ジョン王」の私生児フィリップは、北条義時のような野心家ではありませんが、芝居の牽引力となる役柄。また一味違った小栗旬が見られそうです。
「鎌倉殿・・・」で成長した小栗旬。どんなフィリップを見せてくれるでしょう。楽しみですね。
芝居上演は当初の予定より延びましたが、その分成長した小栗旬の演技がどう光るでしょうか?
吉田鋼太郎は最近よくシェイクピアの芝居を演出、出演しています。演出も担当しています。蜷川幸雄さんの後を引き継いでの演出です。
吉田鋼太郎はジョン王を翻弄するフランスのフィリップ王、どんなタヌキオヤジを演じてくれるか、こちらも目が離せません。
この芝居、すべての役を演じるのが男性です。母后エリナーも男性が演じます。
シェイクスピア研究の学者さんたちが軒並み言うことには、どんな演出であれ、また出来具合がどんなであれ、シェイクスピアは読むより見る方が絶対にいいと。
芝居上演は予定では2022年12月26日〜2023年1月22日です。Bunkamuraのシアターコクーンです。ただしこの公演、1月3日が中止、1月4日13:30〜8日12:30開演回まで中止となりました。
しかし・・・芝居再開が決まりました。2023年1月9日(月)12:30の回からです。
その後、愛知、大阪、上演が行われます。
この休止で配役が変更されます。ジョン王役の横田栄司さんが降板され、吉原光夫さんに変更になります。
埼玉、愛知、大阪公演はジョン王役を吉田鋼太郎さんが演じます。そしてフランス王役には新たに櫻井章喜がつくこととなりました。
こちらの配役も面白そうです。
ちなみに吉田鋼太郎さんは若い時、出口典雄さん演出の劇団シェイクスピアシアターで、私生児フィリップを演じられたことがあるそうです。これもまた面白い巡り合わせですね。
この芝居からますます目が離せなくなりそうです。
シェイクスピア 「ジョン王」の見どころ、私生児フィリップに注目
この芝居で重要な役割を果たすのは、「私生児」です。誰の私生児かというと、ジョン王の兄リチャード1世です。
私生児の名前はフィリップと言います。王家の系図に載っていません。ただ「子」とあるのみです。
フランス王の名前もフィリップです。実に紛らわしいです。私生児というイングランド側の人物と頭に叩き込んで置かないと・・・
この私生児、ジョン王の母親、皇太后エリナーにえらく愛されます。(歴史上ではアリエノール・ダキテーヌの名で通っています)皇太后はリチャード1世が息子たちの中で一番のお気に入りだったので、その息子というと私生児であってもやはりかわいいものなのでしょう。
フィリップは私生児でありますが、王位を主張するとかそういう性質の役柄ではありません。
むしろ芝居の語り部的な役割を果たしています。シェイクスピアそしてその時代の芝居でよく見られる手法で、芝居に語り部を用いることがよくありました。
狂言回しという言葉もあります。それ的な役割、と呼ぶのが良いかもしれません。
有名なところを言えば「ハムレット」のホレーショがそれに当たります。
はっきりと芝居のナレーションをしているわけではないのですが、最後に芝居の口上に当たるセリフを述べます。
「ジョン王」の芝居ではタイトルが「ジョン王」と言いながらその内容は、冷徹なワルになりきれなく、小悪党的な面ばかり目について、なんとも主人公に共感できない作品です。
しかし、その代わり目立つのが「私生児フィリップ」。口達者な役柄です。芝居のジョン王からでさえも「歯に絹着せぬ」とか「面白い」奴と言い表現をされています。
口数が多く、早口です(でもシェイクスピアの芝居はセリフが多いから、だいたい早口に聞こえます)シェイクスピア演劇を見る時はその早さが芝居の魅力となって現れています。観客を惹きつける場面ですn。
フィリップはジョン王の言動に呆れはするのですが、イングランドを裏切る行為はしません。ブレない登場人物です。
時としてフィリップの方が主人公か・・・と思われる時もあるのですが、フィリップの結末がどうなるか、その身がどうなるかわからずに終わってしまい、どうも全体的に中途半端な芝居?という感想が否めません。
「ジョン王」口コミ
「ジョン王」の口コミによると、評判は上々です。
芝居から感じられる圧がハンパない、ということです。それだけ熱気と集中力が凄い芝居ということができます。
観客は皆さん、芝居からエネルギーをもらった、と述べておられました。
芝居運びのテンポが良く、役者さんたちの息遣いが感じれる芝居です。これはかなりシェイクスピアが目指していた芝居に近そうです。
それに小栗旬も一皮むけた、と観客に感じさせます。やはり舞台発表の時に、吉田鋼太郎が「フィリップはぜひ小栗君にやってもらいたい、と思っていた」と言っていた通り、小気味がいいフィリップ、と評判です。
ですが、設置がちょっと面白いらしいですよ。登場シーンにビックリです。これ以上言うとネタバレになるのでやめておきますが…
歌が出てくるそうです。これは意外ですがハマってしまう人、出ています。どんな歌なのでしょう。聞いて見てのお楽しみです。
予備知識があった方がよかった、という声もありましたので、是非、あらすじのほうもお読みいただければ幸いです。
芝居全体を通してみると、シェイクスピアを媒体にした吉田鋼太郎さん、および出演者さんたちの平和への祈りのメッセージが伝わってくる作品のような気がします。
実は、吉田鋼太郎さんが、故蜷川幸雄さんのあとをうけた、「彩の国シェイクスピア」シリーズはこれが最後ということらしいのですが、残念ですね。また機会があれば再演していただきたいです。
「ジョン王」はシェイクスピアにとってどんな位置を占める作品だったでしょうか?
シェイクスピアは作品を一つ書くごとに作品の深みが増していっています。
このジョン王も、シェイクスピアの作家生涯においては一つの次に進むための大事なステップなのです。
シェイクスピアが戯曲「ジョン王」を書いたとされるのは1596年です。シェイクスピアの作品の傾向としては第2期あたりに属しています。
第2期、とはどんな時期か?この時期の作品としては「真夏の夜の夢」、「ヴェニスの商人」、「ヘンリー4世1部」などがあります。「ジョン王」が見られるのはこの辺りです。
シェイクスピア第二期は、一つの作品のなかに、様々な世界が出てきます。
一番良い例が「真夏の夜の夢」。これは現実の職人たちの世界と、職人の一人が迷い込む妖精の世界がこの二つが入り混じっています。これを混ぜこぜ煮込み料理の世界、という意味で評した学者がいました。
シェイクスピアのもう一つ前の第1期の代表作「ロミオとジュリエット」と比較して見ると、ロミオとジュリエットは、現実にある一つの世界のみを猛スピードで駆け抜けていきます。
出会い、そしてすぐに結婚という具合にかなり直感的に突っ走っていきます。いわゆる青春時代を駆け抜ける若者のように。直情的です。だからこそ第1期なのですけど。
それに比べると、第2期は色々な世界が同時に出てきて登場人物は、そのいくつもの場面を楽しむ、そんな世界です。
「ジョン王」ではイングランドとフランスの両国が舞台となり、両国の戦争が描かれ壮大なスペクタクルな演出でした。二つの国、が多様な世界観を表しています。
と、同時に少しだけシェイクスピアの第3期に足を突っ込んだ作品でもあります。
シェイクスピアの第3期は、多様性が人間の内面に及ぶフェイズに入ってきます。ジョン王が甥のアーサーを邪魔に思いその死を命じながらも、臣下の判断で生き延び安堵する面を見せる場面など、少しずつ心の中に葛藤を作り出す箇所が垣間見えます。
シェイクスピアの主人公たちの、移り変わりを見る一つの通過点としてジョン王の存在を描いたのではないでしょうか。
ジョン王の人気そのものがなかったことから、いまでも上演される機会はあまり多くありません。しかし今回の上演で、一つこの芝居の魅力が発見できそうでう。
ジョン王、ロビン・フッドに登場、やはり・・・イヤな奴
ジョン王が出てくる映画といえば、「ロビン・フッド」。「ロビン・フッド」をご紹介しましょう。
ロビン・フッドは義賊。義賊って?・・・泥棒なのですが、一言で言うと、平民特に貧民を救うために、お金持ちそれも悪徳お金持ちの金品をを奪って、平民にばらまく盗賊のことを言います。いい泥棒?
日本では鼠小僧が義賊、なんて言われています。平民には人気があります。
ロビン・フッドは当時に圧政に反対し立ち上がった人物という物語設定です。
誰が圧政を敷いているかというとジョン王です。十字軍でリチャード1世の遠征中を弟のジョンが執政を預かる、時代背景です。
物語の中では、ジョン王は、兄を追い落とし自分が王となるために人民を苦しめています。何をやったかというと、自分がすでに王であるかのように振る舞い、兄に忠誠を誓っている地方貴族の領地や財産を取り上げて自分の側近に分け与える。
しかも兄なんか戦争で死んでくれればしめたもの、なんて考える始末。
自分の側近また側近の配下の息の者たちが、兄の臣下の領地で乱暴狼藉を繰り広げるのを放っておいて、略奪するに任せる・・・むしろ奨励する等など、暴君以外の何者でもない振る舞いに明け暮れていました。
まさに、味方になってくれる反面口うるさい親父が死んでよかったと考える、タガが外れたバカ息子、という立ち位置でしょうかね。
ジョン王の悪行に対抗するロビン・フッド。ロビン・フッドが義賊でして、ジョン王側と小競り合いを繰り返すお話です。
最後にリチャード王が帰還して、ジョンに現状の有様を問うと、逃げ出したり、謝ったりと、小心者を暴露します。
ジョン王は、ロビン・フッドの中では大馬鹿な小悪党ぶりが目立ち、大物悪役では到底ありません。
ロビン・フッドに出てくるジョン王像が、ジョン王の後世にまで伝えられる「ダメな王様」のイメージ作りに一役買ったかもしれません。
ラッセル・クロウの「ロビン・フッド」(監督リドリー・スコット)では、従来のロビン・フッド内でのジョン王とつ少し違っているところがあります。
フランスのフィリップ王が、ジョン王と結託します。フィリップ王にとってジョン王の方が御しやすかったのでしょう。さらにフィリップ王とジョン王との間をつなぐ伝令のような騎士が登場します。この騎士がまた曲者でして・・・
フランスのフィリップ王は、ジョン王よりさらにタヌキで、やっぱり徹底した悪役になれず中途半端な小心者にしかなれないジョン王でした。情けない・・・と映画を見ていてもため息が漏れます。
さすが、リドリー・スコットと思って映画を見進めていっても、やはり・・・ジョン王はジョン王でしかない・・・
またこの映画では、リチャード1世は死んでからのイングランド帰還になっていました。
シェイクスピアの「ジョン王」のあらすじ
まずはシェイクスピアの芝居「ジョン王」のあらすじをざっと見てみましょう。
リチャード1世の後を継いだジョン王。しかしジョン王の継承には反対な人もいます。その一人がジョン王の死んだ兄、ジェフリー(フランス語読みでジョフロワと呼ばれることもあります)の妻コンスタンスでした。
コンスタンスはジェフリーの忘れ形見、アーサーが王位を継ぐべきと主張して、フランス王フィリップに援助を求めます。
イングランドとフランスで王位継承をかけて戦争となりますが、それぞれの王は自分たちの利益を考え和睦します。条件は、フランス国内のイングランド所領をアーサーに引き渡すこと。
ですがアーサーに土地が渡るやいなフランス側は和平条約を破って戦争に再び突入です。
そんなわけですからイングランドの手に渡ったアーサーは幽閉されるてしまいます。
時を同じくして、カンタベリー大司教の任命に関し、ジョン王はローマ教皇を怒らせ破門となります。
ジョン王はアーサーの、暗殺を企んで臣下を差し向けるのですが、臣下は実はアーサーを助け、死んだこととし、どこかに逃します。
アーサーがジョン王の命令で殺されたと聞いた、貴族たちはジョン王の行為に反発しフランス側につこうとします。
ここでジョン王は、アーサー暗殺の命を与えた臣下に対し激しく怒りますが、実はその臣下がアーサーを助けた真相をこっそりと聞き、安堵します。
ここでもジョン王はワルなのか、はっきりしません。ただの小心者にしか見えません。
しかしアーサーは自ら命を絶っていました。
結局ジョン王は教皇に謝罪し和睦したのですが、その後に王は熱にうなされて死に、芝居は終わります。
ジョン王の映画発見!
2012年の映画。原題 Ironclad 邦訳して見ると「強固な砦」という意味になるでしょうか。でも「アイアンクラッド」という名前で映画が公開されていました。
ジョン王のどの時代かというと、「マグナカルタ」に署名されられた頃です。無理やり署名させられた、自分の王権が制限された・・・これに大いに不満を持ち権力奪還に向かい戦いを始めるジョン王・・・そういう物騒な映画です。
ジョン王は自分の主権の奪還に向けて傭兵隊を募ります。その傭兵は皆悪人ぞろい。1000人ほどで組織された軍で、ロンドンに向けて進撃します。
防御側は、なんとかロンドンに入れないようにするのですが、その最後の砦となったところがロンドン手前のロチェスター城。
しかし守り側の人数は約20名と圧倒的に少なく、激しい攻防が繰り広げられます。戦争シーンもかなり血みどろの画面になります。「血が苦手な方にはオススメしません」という注意書きがあった通りです。
大人数で敵が攻めてくる砦を、少人数で守る。このシチュエーションは黒澤明の「7人の侍」にちょっと似ています。監督が黒澤明をリスペクトしている、というではありませんか。クロサワの影響・・・思った以上に日本ってすごい!
「アイアンクラッド」のジョン王は極めて残虐で冷酷です。敵方の騎士を捕まえて拷問を加える、残虐な殺し方をする。完璧な悪役です。
砦側の抗戦は難儀の一語に尽きました。どうしてもこれでもうダメか、というところに援軍がきます。
援軍に追われジョン王は逃走しますが、その途中ジョン王の赤痢にかかって死ぬ結末になっています。戦いは映画の中だけですが、赤痢で死ぬ、これは史実通りになっていました。
「アイアンクラッド」ジョン王の性格は現実のジョン王が持たない性格の持ち主でした。映画制作者は、歴史上のジョン王に煮え切らなさを見て、思い切った悪役を作りたかったのか?と疑いたくなります。
とにかく、ここのジョン王は冷酷でどう猛ですが。これを勇気と言っていいのか・・・
実際のジョン王もこれくらいワルに徹することができれば、ヨーロッパの戦国時代、もっと違うものになっていたかもしれませんね。ひょっとしたら面白いことになっていたかもしれない。
時代劇の主人公は、良い人間でも悪い人間でも、印象の強い人であるのが常ですが、ジョン王に関しては実物ぞうは、大した人物と思えるところは感じられませんでした。
でもこの映画はやりすぎなでは?
イングランド史上最悪な王と言われながら、現代でも映画の中に登場する王。数えられないほど存在した王たちの中でも、名前が知られている王になったジョン王。ある意味個性的な王であったのかもしれません。
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