NHKで9月から始まったドラマ、よしながふ原作の「大奥」。
混血の蘭学医 青沼が出てきて話題になっています。
美しい青い目をして、流暢に日本語を話し、研究熱心なお医者様・・ドラマをみていて惹きつけられませんか?
平賀源内が、長崎で見つけてきた蘭方医でした。
せっかく、成果を上げることができたのに、幕府内の、老中たちの争い事を逃れることができず、死罪を申し渡された、悲劇の登場人物です。
そんな哀しい、ハーフの医師・・・の活躍ぶりを解説していきましょう。
大奥 青沼 は実在の人物か?
青沼は実在か?架空か?
残念ながら、架空の人物です。
「青沼」という名前は、大奥に勤めるようになってから与えられた名前です。
元は、吾作(ごさく)と言いました。
番組で、出てきた冒頭で、平賀源内さんをなぐってしまいましたね。
「おなごとは思わなかった・・・」
番組をまず見た人、「え?あの西洋人さん誰?」ではなかったでしょうか?
その後、熱心に研究に取り組む姿に、こんな人、実際にいるかも、なんて思わせられましたね。
ドラマ「大奥」は男女逆転の世界なので、青沼にも、相当する実在の人物がいそうなのに、いなかった、というのは残念です。
物語の中では、男女逆転であろうが、やはり外国人というものに偏見を持ちいじめが始まります。
青沼が講師の講義を全員欠席したりと、現在でもあるような無視のいじめとか・・・
ですが、だんだんと青沼の熱心さと誠意に、日本人の心もほぐれてきて全員一体となって、病気解明のチームを作れるようになりました。
それにしても、青沼の立ち振る舞い、所作、日本人以上に日本人らしい。
青い目の侍はいた?
江戸時代に、青い目の侍とは・・・・
ふと、頭に浮かんだことは、「眠 狂四郎」もハーフじゃなかったかと・・・
創作人物とはいえ、「眠 狂四郎」は徳川家斉の時代、という設定です。
家斉(いえなり)は、青沼や平賀源内たちがいる家治(いえはる)の次の将軍ですから、時代的には近いです。
それなら、1700年後半には、混血の子供も生まれていたのでしょう。
青沼は、オランダ人が長崎にいましたから、「大奥」のような設定も無理がありません。
ですが、実のところ、江戸には、西洋人系の侍はいないと思います。
青沼の師は実在
青沼は長崎で、蘭学を勉強していました。
吉雄耕牛(よしおこうぎゅう)の弟子でした。
吉雄耕牛は蘭方医で、そして代々オランダ語の通詞を務める家柄でした。
通詞というのは通訳です。
通訳が仕事として成り立つのだから、需要が多い仕事だったのしょうね。
ということは、結構な数のオランダ人が日本にいたことの証明になります。
と言っても長崎についていえば、ということですが。
ドラマ「大奥」の中で、吉雄耕牛は、青沼を大切な弟子と考えていました。
自分の、通詞の仕事を青沼に継がせようと思っていたほどですから。
しかし、耕牛の妻は、反対します。
耕牛には息子がいて、妻は息子が当然継ぐものと思っていましたから、よそ者の青沼に家業を継がせるのに反対でした。
その時の、妻の言い分として「オランダ人の通詞なんて、聞いたことない!」でした。
でも、日本語がノンネイティブの人の方が通訳としての仕事はしやすい、と思うのですが・・・
吉雄耕牛は、人種にそれほど偏見を持っていない感じでしたが、妻をはじめ、オランダ人の数が多い長崎にいてさえ、人種差別の考えを持っていた日本人がまだまだいました。
大奥 青沼のモデルは?
青沼は架空の人物でしたが、モデルとなった人はいたのだろうか?
青沼のような存在がいたか・・・ですが、
どう探してもこれに当てはまる人物は出てきません。
しかし、ハーフの医師という存在・・・引っかかる人がいます・・・
それはもっと時代が下り、幕末になりますが、
長崎生まれで、父はオランダ人、母は日本の遊女、そして本人は医師。
オランダおいね こと橋本イネ が近いです。
この人は女性ですから、男女逆転の話には向いていそうなモデルになるかもしれません。
橋本イネの父は、オランダ人医師シーボルトです。
青沼のモデルはこれといって、いないということですが、あえて言えば、オランダおいね をあげたいです。
それに青沼の母親も、長崎の遊女だと言いますから、設定が似ています。
もっとの青沼の父のことは、わからないのですが。
混血で偏見が多く、それも女性でいながら医者になり、二重の意味で苦労した女性・・・オランダおいね と青沼のイメージが重なって見えます。
大奥 平賀源内と青沼
青沼と平賀源内はどちらも、ドラマ「大奥」に登場する、江戸時代の科学者ですが、性格は正反対でした。
平賀源内は、早口でちょっと落ち着きのない感じですが、生命力、行動力に溢れる人物。
性格的に、江戸っ子ですね。(江戸では『いどっこ』というらしい)
対して、青沼こと吾作は、思慮深く、落ち着いた性格です。
一見、穏やかそうに見えますが、正しいと思ったことは曲げない芯が通った人物です。
最初は吾作(青沼)は、江戸行きに乗り気ではなかったのですが、平賀源内の情熱に屈して江戸に行って、赤面疱瘡の謎解きにかかります。
正反対の2人ですが、どちらも親しい者を、赤面疱瘡で亡くしており、病気撲滅に対する熱意は同じでした。
青沼は、混血であるが故に、平賀源内は男装していることで周囲から奇異の目で見られていることなど、どちらも世間から、偏見の目でみられている、という共通の悩みを持っていました。
2人は、同じ病気という敵に立ち向かう同志、親友の間柄でした。
男女だから、いずれ恋愛感情でも・・・と思っていた視聴者からの期待(?)は外れますが、それ以上の強い絆が2人の間にはあります。
大奥 青沼の最後
青沼の努力は報われなかったのでしょうか・
予防接種成功と見えたのに・・・
赤面疱瘡の予防接種は完成しました。
それは赤面疱瘡の毒素を弱めたものを、人の身体に入れること、いわゆる注射か種痘のようなやり方でした。
赤面疱瘡はだんだんと、患者数が減り、病気にかかっても治る幼少の男子も出てきました。
喜ぶべきところなのですが、他の病気の予防接種と同じように、開発されたばかりの時はどうしても不備が起こりがちです。
赤面疱瘡もそうでした。
接種から死んだ人が出ました、それも幕府の重要人物 松平定信(まつだいらさだのぶ)の身内が、種痘接種の副作用(今なら副反応と言います)で命を落としました。
田沼意次失脚へ
松平定信は、徳川吉宗(よしむね)の孫で、時の将軍 家治(いえはる)とは従兄弟(従姉妹?)にあたります。
松平定信は、同じくもう1人の従兄弟(従姉妹)一橋治済(ひとつばしはるさだ)と一緒になって、老中 田沼意次を失脚させて、次期将軍職を狙っていました。
松平定信のところから死亡者が出たのは、ワクチン推進派の田沼たちを追い落とす良いきっかけになりました。
責任を、田沼意次に全て押し付けました。
この時、世の中は、浅間山噴火、天明の飢饉などといった、自然災害に襲われました。
また、田沼意次も自分の娘 田沼意知を殺害され、大打撃を受けましす。
そこさらに、将軍 家治の死去、ヒ素による毒殺でした。
将軍の毒殺を防げなかったことで、田沼意次は老中職をとかれ、完全に失脚です。
青沼いもはや、力を貸してくれる人はいなくなり、青沼たちは罪人扱いです。
罪人としての罰が待っていました。
青沼の死罪
世の中の風潮はたちまち変わって、種痘は絶対に行わない、蘭学は廃止、蘭学者追放の名が下されました。
青沼をはじめとする、種痘研究チームは江戸城より追放です。
もはや守ってくれる、老中 田沼様はいません。
チーム解散を言い渡され、全員即刻、不浄門というところから追い払うように出されました。
そして青沼のみが死罪です。打ち首でした。
最後にに青沼は、死罪は自分だけだったこと、ワクチン接種はまた続けられる見込みがあること・・・これを聞かされた、安心して死んでいきました。
青沼の死は、日本人以上に日本人の魂を感じさせる最期です。
本当は日本人が持っていたはずの、他のために努力をすること、そのために命を投げ出すのも惜しくない、という大和魂が、西洋人ルーツの人物の中に息づいていたことが、哀しいです。
部下だった、黒木たちは、こっそりと蘭学を学び研究を続けていきます。
この話の救いは、黒木たちの行動です。
物語の中では、青沼に関するすべての記録を抹消し、青沼の存在を無かったものとしました。
実在ではない、イコール記録にない、とした、作者の創作力の見事さを感じます。
大奥 青沼 キャスト
「吾作」こと「青沼」役は、村雨辰剛(むらさめたつまさ)さんが好演しています。
今回、非常にハマり役でした。
日本語が大変上手いので、役と同じように日本人の血が入っているのかな?と思ってましたら、全然違いました。
生まれも育ちもスウェーデンのスウェーデン人です。
日本に興味を持ち、日本での生活に憧れ、日本にわたり、日本国籍まで取ってしまいました。
日本の徒弟奉公に憧れ、庭師になりました。
村雨という名前は、日本の刀の名前(ムラサメという刀が『南総里見八犬伝』に出てくる)と、造園の親方の苗字、村雨と両方をかけて、つけました。
ファーストネームの辰剛の辰は、自分生まれた年が日本の辰年に当たること、剛は親方の名前をもらった、ということです。
造園業の仕事と一緒に、俳優、タレント業を同時にやっています。
NHK朝の連ドラ「カムカムエブリバディ」に出演していました。
近いうちに「どうする家康」でウィリアム・アダムス(三浦按針 みうらあんじん)役で出ることになっています。
三浦按針もまた、外国から来て日本に帰化する役です。
こちらも楽しみです。
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