シェイクスピア原案「マクベス」が現代劇になりました。
主人公は、妻のマクベス夫人こと、レディマクベスです。
レディマクベスと呼ばれることが多いのですが、実はレイディマクベスが正しいタイトルです。
シェイクスピアが描く女性で誰が好き? と聞かれて、「マクベス夫人」というと大抵の方に引かれます。
それほど残忍な女性と、みられていますが、この芝居「レイディマクベス」では、残忍ではない、何かを心に秘めた女性として描けれています。
天海祐希主演で、期待度マックスです。
レディマクベス、天海祐希主演
レディマクベスとは
レディ(レイディ)マクベスは、シェイクスピアの戯曲「マクベス」を元にした芝居です。
世界初演の舞台です。
「マクベス」の登場人物、マクベス夫人を「レディ(レイディ)マクベス」として、主人公にした芝居です。
一つ心に留めておいてください。
「レイディマクベス」はお芝居です。
ミュージカルではありません。
作はジュード・クリスチャン、イギリスの女流作家です。
演出は、ウィル・タケット、音楽は岩代太郎です。
作者が言おうとしていること、それは時代を超えて1人の女性、レディマクベスが今の私たちに何を訴えようとしているのか・・・・?
レイディの心の叫び、私たちにはどう聞こえるでしょうか?
レディマクベス、天海祐希
レディマクベス、ことマクベス夫人は天海祐希にキャスティングされました。
芝居中では、「レイディ」の名前で呼ばれます。
シェイクスピアの芝居では、重要な役の割に細かな設定がありませんが、ここでは軍人の経歴を持つ女性です。
軍人で、兵士仲間のマクベスと結婚。
子供も生まれ、妻としての生活も安定していますが、どこか物足りない人生・・・・
夫は相変わらず兵士として戦場で活躍をしています。
シェイクスピアの「マクベス」では、残忍だと言われた女性。
かつては、宝塚歌劇団で、名男役として鳴らした、天海祐希が男にも勝るとも劣らない活躍を見せるレイディマクベスを演じます。
そんな天海祐希さんに、強さと弱さを同時に持ち合わせた役柄が、まさにぴったりだと思います。
レディマクベスではどのような女性となって登場するでしょうか?
レイディマクベス 天海祐希の決意
天海祐希さんの意気込みが感じられるお芝居です。
ご本人のレイディマクベスに対するイメージは、
「高みを目指しているつもりが、どんどん落ちていく、そのギャップが面白い。悪女か、または強い人なのか、悲しい人なのか・・・見てくださった方の感じ方を伺いたいのです」
と多面性の女性であることを、語っています。
「世界初演には、震えがきますが、初心に帰って自分が何者かを知る舞台にしたい。
マクベスという芝居を知っている人にもまた初めての人にも、それぞれ楽しめる舞台にしたい」
と抱負を語っておられました。
レディマクベス モデルがいた
11世紀の実在した王妃でした。
夫のマクベスは実在した人物で、前王(ダンカン1世)を殺害し、スコットランド王になった人物です。
マクベスはダンカン1世の従兄弟という間柄でした。
さらに、妻はケネス3世の孫娘でした。
ケネス3世というのはダンカン王1世から3代前の王です。
そして、歴史上では妻の名前は、「グルッホ」であると記録されています。
当時のスコットランドには『曽祖父の時代にさかのぼって、王を親族に持つ人物』武勇や人柄が優れていれば、王位につける制度になっていました。
ですからマクベスは王位につける資格がありましたし、妻の方にも王位にを狙える正当性がありました。
ですから、マクベス夫妻が王位簒奪者だとは言い切れません。
古代スコットランドでは、女性が王位についた例もありました。
ですから、夫人ことレイディマクベス本人が王位を狙っても全然おかしくない感じです。
女性でも王位が・・・この考え方を活かしているのが、「レイディマクベス」なのです。
レディマクベス、何語で上演?
日本語で上演されます。
原作者はイギリス人で、芝居の元となった作品はシェイクスピアだから、やはり英語。
そして、マクベス役は、アダム・クーパー、これもイギリス人。
当初は、マクベス役だけ英語で、あとは日本語で、なんて話も聞こえてきていましたが、全て日本語での上演ということです。
アダム・クーパーは現在日本語のセリフを勉強中です。
今回の芝居、マクベスの役は、言葉よりも感情表現の方が大事な要素なのです。
ですから、もともとバレリーナのアダム・クーパーにとって、うってつけの役です。
レディマクベス 上演時間
上演時間は、2時間15分です。途中休憩が15分入ります。
芝居日程は、10月1日〜11月12日です。
場所は東京では、よみうり大手町ホール。
チケットはすでに完売です。キャンセルが出るかもしれませんので、ネットでチケット取扱のキャンセルをまめにチェックする必要があります。
11月16日〜11月27日は、京都劇場での公演です。
こちらは10月1日から、チケットの一般販売です。
レディマクベス、舞台あらすじ
舞台あらすじ
「レイディマクベス」の国名は、舞台では明言されていません、とある国、戦の絶えない国ということです。
統治するの人物はダンカン。
シェイクスピアの芝居では、ダンカン王でした。
レイディマクベスは優秀な軍人で、軍隊の中で、マクベスとであい、恋に落ち、やがて娘を授かります。
しかしレイディマクベスは出産のため、体力的に弱り、そして母としての役目を果たすために、戦場を離れなければならなくなりました。
戦場に戻れない自分をもどかしく思うレイディ。
一方、夫、マクベスは戦争で次々と戦果を上げ、地位も上がり、国の中心人物になっていきます。
レイディマクベスは、夫と見た夢、それは夫と共に国を治める、こと。
そんな中で、ダンカンは自分の後継者を、血縁者以外から選ぶと、発表しました。
さて、どうなるでしょう。
一方、戦場に居続ける、夫マクベスは、人を殺し続けやがて、それが原因で心を病み、言葉が発せられなくなりました。
それからは、ボディランゲージで、自分の言いたいことを伝えるのです。
人間の脆さが、こんな形で出てしまいました。
レイディマクベスの名前
シェイクスピア劇の女性たちには、それぞれ名前を持って登場します。
ジュリエットだって、「ハムレット」の王妃カードルードもオフェリアも、戯曲に登場する女性には、みな名前があります。
「マクベス」だけは、こんなに強烈な印象を与える役なのに、「マクベス夫人」としか名称がありません。
古い時代は、女性には自主性を認めていなかったので、名前はあまり重要視されなかったのかもしれません。
しかし、シェイクスピア劇の中で、1、2を争うほどの、自己主張の強さを誇る女性に名前がないのはおかしい。
スコットランドの歴史では「グルッホ」という名前が残されていたのですが、シェイクスピアは使いませんでした。
シェイクスピアはそこまで知らなかったのか、グルッホという名前の響きがよくなかったから使わなかったのか?
今回の「レディマクベス」は、その曖昧さを逆手に取って、演出したのではないかと思われます。
戦場の第1戦からひいてしまった、レイディマクベス。
一見、昔の女性のように、他に依存しなければならないような状況に追い込まれます。
そこを不服として・・・起こすアクションこそがレディマクベスの芝居を織りなすのです。
それどころかシェイクスピア本人が、可能性を秘めたキャラクターとして、あえて、レイディマクベスに名前を与えなかったような気がしてきました。
レイディマクベスに見る、「マクベス夫人の」新しい解釈
シェイクスピアの「マクベス」をベースにしているから、妻であるレディマクベスも原作のシェイクスピアからの性格を当然引き継いでいます。
シャイクスピアでは「夫を滅びに導く女」なのか、「権力に取り憑かれた女」なのか、あるいは「夫を愛するが故に、権力への道を示そうとした女」なのか・・・に注目するところです。
しかし、「レイディマクベス」からそれ以上のことが読み取れます。
中世の世界観(シェイクスピアの生きた時代)は、女性は男性に従う、ことが当然と思われてきました。
そのルールから外れる女は、「悪女」でした。
現代では、女性も自分の意思を堂々と示し、自分の生き様を選ぶことができる、いや、必要となってきました。
芝居のベースに、シェイクスピアを持ってくることで、古い概念を底辺に置きます。
古い殻から抜け出て、自分らしく生きようとする、主人公の葛藤、それこそがレイディマクベスの物語なのです。
舞台で大きく変わるところは?
シェイクスピアの「マクベス」では、マクベス夫人ことレイディマクベスの方が先に死にます。
マクベスよりも先に、精神の均等を失っての死です。
ところが、「レイディマクベス」の方では、レイディの方が生きている必要があります。
最後にマクダフとの死闘も出てきます。
シェイクスピアの場合、マクベス夫人(レイディマクベス)が死んでからは。マクベスが持つ負の感情は全てマクベスが背負っていくことになるのです。
そのことから行くと、「レディマクベス」では全ての苦しみを、レイディが担ぐことになります。
これは非常に苦しいことなのですが、その苦しみにどう対処するのが、きっとこの芝居の見どころのj一つとなるのでしょう。
魔女は出るのか?
シェイクスピアの芝居では、最初に3人の魔女が登場してマクベスの運命を予言します。
予言の一つが当たったことから、全ての悲劇が始まりました。
反対の言い方をすると、魔女というのは、マクベスの心の願いを述べたに過ぎないものだったのかもしれません。
芝居では、マクベスの心のささやきとなって出るのか、あるいは別な形となって出現するのか、それとも全くでないのか、注目したい箇所です。
レディマクベス、キャスト
主人公、レディ・マクベスは天海祐希です。
共演者たちも豪華絢爛です。
- まず夫のマクベス役 アダム・クーパーです。アダム・クーパーはイギリスのバレエダンサーですが、ミュージカルにも積極的に出演しています。今回のマクベスは色々と、トラウマなど、精神的な苦しみも味わう人物です。
- 鈴木保奈美、マクダフ役です。マクベス達の上官で国王のダンカンの血縁者でという役どころです。マクダフは最後にマクダフとマクベスの一騎打ちが行われます。マクダフはシェイクスピアの中では男性です。
- 要潤 バンクォー役。レディマクベスの幼馴染。ちょっと汚いというがずる賢い役です。野心家なのでしょうか?シェイクスピアでは、マクベスの友人でもあり、控えめな性質な人物ですが。
- 吉川愛、マクベス夫妻の娘です。シェイクスピアでは、赤子では赤子での登場でしたが、「レディマクベス」では成長した娘となっています。成長している、ということは娘の感受性、などがステージ上で見られます。どのような登場でしょうか?
- 栗原英雄、ダンカン。マクベスがいる軍の指揮官で、国王。レディマクベスのことも何かと気にかける。レディマクベスにとっては精神的な父のような存在。
レディマクベス、シェイクスピア原作では
原作の「マクベス」はシェイクスピアの戯曲です。
シェイクスピア劇でのマクベスのあらすじを紹介しましょう。
シェイクスピアのあらすじ
「マクベス」の舞台は11世紀のスコットランド、実際にいたスコットランド王の名前です。
「マクベス」は、ウィリアム・シェイクスピアが書いた戯曲の一つで、1606年に初演されました。
物語はスコットランド王国を舞台に、野心と欲望に取り憑かれた主人公マクベスの台頭と滅亡を描いています。
物語は、戦場での英雄的な活躍から始まります。
マクベスは国の将軍として功績を挙げ、ダンカン王から称賛されます。
その後、3人の魔女から予言を受け、王になると言われます。
この予言に刺激され、マクベスと彼の妻マクベス夫人(レディマクベス)は野心を持ち、王位を手に入れるために陰謀をめぐらします。
マクベスと妻(レディマクベス)は、ダンカン王を暗殺し、自ら王位につきます。
しかし、その結果、彼らは罪悪感と狂気に苛まれ、殺人の道を選んだことを後悔します。
王位を手に入れたものの、彼らの行動は暴力と混乱を引き起こし、周囲の人々との対立が激しくなります。
物語は、マクベスの王位をめぐる争い、彼の罪悪感、そして彼を倒すために立ち上がる反乱軍との戦いに焦点を当てて進行し、最終的にマクベスは滅びる運命で終わります。
彼の野心と欲望が彼の滅亡を招く過程が、この戯曲の中心的なテーマです。
シェイクスピアのレディマクベス
レディマクベスの、ここではマクベス夫人ですね、セリフから、彼女は激しい、残忍な性格と思われているのです。
夫のマクベスは、スコットランドの王位につく資格があるので、レディマクベスは夫に王になってもらいたかったのです。
すでに存在するスコットランド王(ダンカン王)を殺害してまでも、王位が欲しかったのでした。
ダンカンをを殺すのに二の足を踏み出せない夫に、
情けない。自分なら、今ここで乳を飲んでいる赤子の頭を叩き割って殺すことができる、
ということを言うのです。
これだけ聞けば、非常に残忍さを秘めた女なのですが、実は口だけなのです。
王を、なかなか殺さない夫の代わりに自分が王を殺そうとしますが、眠っているダンカン王の顔が自分の父親に似て、手を下すことができなくなりました。
結局、口ばかりで、王を殺してもいません。
それでやっと、マクベスはダンカン王殺害に踏み切るのでした。
マクベスの芝居の中では、レディマクベスはついには、罪の重さに耐えきれず、正気を失ってしまいます。
いつまでも手に染みついた血が取れない、と言って、いつまでも手を洗い続ける・・・
今でいう強迫性障害のような症状が現れています。
ということは、残忍さからは程遠い、むしろ愛情深い性格だったのかもしれません。
シェイクスピア作品のマクベス夫人の性格がどこまで「レイディマクベス」に再現されているか、とても興味があります。
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