バッキンガム公爵、歴史上に何名か著名になったバッキンガム公爵がいます。
今回は三銃士に出てくるバッキンガム公爵を見て見ましょう。
イギリス人俳優オーランド・ブルームが従来のイメージとは違ったバッキンガム公爵を演じています。
9月に新たな「ロード・オブ・ザ・リング」続編が作られ、それに合わせてこれまでの「ロード・オブ・ザ・リング」がIMAXシアター用に編集されて映画館で上映されます。「ロード・・・・」では超美形のオーランド・ブルームが出演しています。
オーランド・ブルームつながりで、ちょっと違った性格を演じているオーランド・ブルームことオーリーに注目しましょうか。
バッキンガム公爵、三銃士以前
バッキンガム公爵はイギリスの公爵位です。英国王から与えられる爵位です。
三銃士に出てくる話題のバッキンガム公爵は、ジョージ・ヴィリアーズ（1592〜1628）と言います。ヴィリアーズ家で最初のバッキンガム公爵です。バッキンガム公爵になる前は、子爵、伯爵、侯爵からと順番を踏んで登ってきました。
それ以前にもバッキンガム公爵はいましたが、いまはこのヴィリアーズを取り上げます。
イギリス国王、ジェームズ1世とチャールズ1世の臣下でした。
ヴィリアーズ家はどちらかといえば中産階級に属しており、あまり上流貴族に関係ない家柄でしたが、謁見で、チャールズ1世に気に入られ、ナイトに任ぜられた後ずっと国王に使えていました。
姿形がよく、物腰もよかったので、重用されたようでした。男性でも見目麗しいと得なこともあるのですね。でも当時では、ジェームス1世とバッキンガムの仲が・・・・・ひょっとしたら・・・という噂もあったらしいという話でした。
そして皇太子チャールズの縁談交渉なども任されました。まずはスペイン王女をターゲットにしましたが、こちらはまとまらなかったようですね。
ですがこの縁談にはスペインの陰謀が隠されており、交渉を長引かせることで当時進行中だった30年戦争をイギリスの目から反らせることが目的でした。
それに気がついた、バッキンガム公はすぐに帰国し、イギリス国王に報告します。やがて議会招集となったわけですが、その素早いバッキンガム公爵の行動に感嘆したイギリス議会ではバッキンガム公爵の人気が上がりました。
この辺り、なんとなくお調子者の公爵様、というイメージなのですけどね。もしかしたらイギリス人が熱しやすい人種なのかもしれません。
バッキンガム公爵、三銃士にて
バッキンガム公爵がフランスに行ったのは、フランス王ルイ13世の妹、アンリエットとイギリス皇太子チャールズとの婚約取り決めのためです
この交渉は最終的には締結でき、アンリエットは無事イギリスに輿入れが決まりました。
ジェームス1世が亡くなり、チャールズ即位したチャールズ1世となった後に、バッキンガム公爵は妃になるアンリエットを迎えにフランスに参上します。
この時にバッキンガム公爵はフランス王妃、アンヌ・ドートリッシュと恋愛事件を起こしてしまいます。
国王ルイ13世とあまりうまく行っていなかった、アンヌ王妃は物腰の柔らかな振る舞いをする、美形のバッキンガム公爵によろめいてしまいました、バッキンガム公爵もアンヌ王妃の美しさに魅かれてしまいました。
この頃のイギリスとフランスの関係は微妙になりつつあった頃です
イギリス内ではカトリックを扱う法案がなかなか決まらず、カトリック側、プロテスタント側双方に良い顔をしたがるバッキンガム公爵は二枚舌と、噂されるようになりました。
カトリック国だったフランスにとってもこのバッキンガム公爵の噂はあまりありがたくないものとして写ったようです。
そんな微妙な時になんで、みすみすスキャンダルを引き起こすことやらかすのでしょう？このお二人は・・・・
「三銃士」一大事件でクライマックスにもなった事件、首飾り事件となって描かれています。首飾りと表現していますが、ネックレスではありません。ある翻訳では飾り紐ともリボン飾りとも訳されていますが、紐でもリボンでもありません。
どうやら12個のダイヤモンドのピンのセットだったようです。ピンは一つの箱に収められており、それぞれのダイヤモンドに所定の場所が決まっているのです。
このピンは使い方がいろいろあるようで、女性ならば襟元の飾り姉にはめて、男性はカフスや服のボタンとしてはめて使うとのことです。
時にはバラバラのダイヤを一本の紐に通してネックレスのようにして使用します。
そのダイヤをアンヌ王妃は夫ルイ13世から結婚のプレゼントにもらっていました。高価なダイヤなのでしょうね。それを事もあろうにバッキンガム公爵に「愛の印」とか言ってあげてしまうのですから、何考えているのでしょうか。
ルイ13世は、そのダイヤ飾りをある宴会でつけてくるように王妃に言い渡します。それは情報を入手したリシュリューの差し金だったのですけれど。
ダイヤを取り戻す為に三銃士は奔走し、バッキンガム公爵もなんとかして戻そうと躍起になります。それをなんとかして阻止しようとリシュリュー側が画策します。その活劇が三銃士を面白くしています。
NHKで放映されたアニメ「三銃士」ではこのネックレスは真珠になっていましたけれどね。
オーランド・ブルームのバッキンガム公爵
「三銃士」のバッキンガム公爵ってこれまでは正義側のイメージでした。でもフランス王妃に想いを寄せてアヴァンチュールに・・・なて正気の沙汰か？と考えると正義とも言えないかな。そんな貴人にちょっかい出そうとするなんて、首が飛んでも知らないよ・・・と突っ込みどころ満載の事件です。
が、しかし「三銃士/王妃の首飾りとダ・ヴィンチの飛行船」のバッキンガム公爵はこれまでの公爵と全く違います。
これまでの「三銃士」では、フランス王妃アンヌ・ドートリッシュの名誉の為に動く設定でした。首飾り事件の時もなんとか王妃に飾りを返却しようとしていました。
が「・・・ダ・ヴィンチの飛行船」では、イギリス側スパイとして活動してむしろ、アンヌ王妃の首飾りを手に入れて王妃の悪い噂を助長するような人物でした。
オーランド・ブルームは髪型も変えて、本人はデヴィッド・ボウイを意識した髪型・・・と言っていましたが、どこかひょうきんな感じで、悲恋に沈むバッキンガム公爵とはまるで違うイメージに仕上がっていました。というかむしろおバカさが目立つバッキンガム公爵でした。
いや、むしろそれを狙った？と思いたいです。
バッキンガム公爵とは、バッキンガム宮殿と関係あるの？
バッキンガムと聞くと、イギリスのロンドンにあるバッキンガム宮殿を連想する人がほとんどだと思います。
しかし、映画や小説でバッキンガム公爵と聞くたびに、不思議な思いを感じたことはありませんか？バッキンガム公爵の名前は聞くのに、なぜバッキンガム宮殿はバッキンガム公爵の住居じゃないのかと・・・
ですが、バッキンガム宮殿は元来バッキンガム公爵の居城だったのです。
1703年にバッキンガム公爵ジョン・シェフィールドの邸宅バッキンガムハウス、それが起源です。
その邸宅を1761年ジョージ4世が自分のための私邸とするために譲り受けました。その後、屋敷を回収して1837年に現在のような形になりました。
バッキンガム宮殿がイギリス王家の宮殿となったのはヴィクトリア女王即位の時からでした。ですからバッキンガム宮殿の歴史は意外と浅いのです。
しかしバッキンガム公爵の歴史は古い。
1444年に創立され、家名も何代か変わっています。何しろ時の国王から与えられる爵位ですから。もちろん世襲制ですが、罪に問われた場合は爵位剥奪ですし、後継者が途切れた場合も違う家に爵位が与えられます。
バッキンガム公爵ですが、1889年シャンドス家の当主が男子を残さずに亡くなったため廃絶となりました。現在は残っておりません。爵位もありません。
継承者がいなくなると「お家断絶」となる日本と少しは似ていますが、日本の「お家」と違って一つの家系だけで継承していくものではないのですね。
それで行くと新たな「バッキンガム公爵」が出てきてもいいのではは？と思いますが、イギリスでは現代の世の中に貴族、というものをあんまり増やしたくないのかもしれません。
バッキンガム公爵の最後
小説、または従来の「三銃士」の中ではアンヌ王妃にダイヤをなんとか返却しようとして、リシュリュー側の包囲網の突破を試みたのですが、ダイヤをかろうじて三銃士たちに託して刺客に殺されます。
「三銃士/ダ・ヴィンチと王妃の首飾り」では飛行船に乗ってミレディと一緒に飛行船で逃げおおせます。
では実際のバッキンガム公爵の死はどうだったのでしょう？
暗殺されたのです。イギリス軍将校ジョン・フェルトンという人物の手によってです。ジョン・フェルトンについては「三銃士」小説の中でも、ミレディにそそのかされてバッキンガム公爵暗殺に及んだ、とあります。
名前の事実は小説でも使われているのですね。
バッキンガム公爵暗殺のニュースは拍手喝采を持って民衆に喜ばれた、と伝えられています。そんなに人気がなかったのか・・・当時のロンドンでは悪評ばかりが目についたようです。
人当たりが良すぎて、相対する陣営に常にいい顔を見せていた政治的手腕が、嫌われた原因かもしれません。
ですが両方にいい顔、ということはある意味懐柔策が得意、とも言えます。時にはこんな人物も必要なのかもしれません。二つの派閥争いがある時には良い和解策を考案することができる可能性がある人物ではありました。
でも軽い人間性が目につきすぎたのでしょうか？
暗殺されたバッキンガム公爵はウェストミンスター寺院に埋葬され、ジョン・フェルトンは絞首刑に処されました。
ジョージ・ヴィリアーズには息子がいて、次代のバッキンガム公爵になります。ヴィリアーズ家は２代で終わり、息子ジョージ（父親と同じ名前）の死後、また違う家がバッキンガム公爵となります。結構移り変わりが激しいのですね。
「・・・・王妃の首飾り」に続編を作る、とも当初は言われていましたが、実は人気のない映画だったようですす。なぜかはわかりませんが。
ひょっとしたらおバカに作りすぎたオーランド・ブルームが、ファンのお気に召さなかったのでは・・・と私は思うのですが。
でも私は好きでしたよ。理屈抜きで楽しめた映画でした。
バッキンガム公爵については、小説「三銃士」では悲恋の人物のように描かれているので、それとは面がクローズアップされているのは面白いです。
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