リチャード3世、金髪?顔復元でイケメン!発見の遺骨で最後とDNA採取!悪役説シェイクスピア、ヘンリー7世?

リチャード3世は、シェイクスピア作品では徹底的な悪役でした。

ところが、昨今になってこのイメージは実は違うのではないか、という説が出てきました。史実はどうだったのでしょう?

2012年、リチャード3世の遺骸と思われる遺骨が発見されました。DNA検査の結果は?意外な発見がありました。

遺骨は葬儀が執り行われ、埋葬されました。

リチャード3世の頭蓋骨から顔の復元に成功しました。リチャード3世の肖像画と言われている画像によく似た複顔になりました。元々は金髪でなかなかのイケメンです。

リチャード3世調査の結果は!金髪だった?!顔復元でイケメン!

2012年、9月歴史家を狂喜させる出来事が起こりました。場所はイギリス中部のレスター、市営駐車場。この場所は昔はグレイフライヤーズと言われる修道院があったそうです。

ここから一体人骨が発見されました。普通人骨が発見されると、殺人事件かと思うでしょう?でも違ったんですね。

修道院があったらしい、と伝承をもとにリチャード3世では・・・と推理されました。

となると、とにかく調査ですね。

リチャード3世とわかったのですが、この発見された人物は幼い頃金髪だった、と。確かに金髪は成長するにつれて茶系に変化することがよくあります。こんな幼い頃の事情までわかってしまうのですから驚きです。

そして青い目の持ち主であることもわかりました。まさに肖像画の通りです。青い目で金髪、聞いているだけでワクワクしてきますね。

そして顔の復元も行いました。現在でも身元不明者の白骨が出た場合、顔復元やっていますね。現代技術を用いればそんな難しくないでしょう。

復元された顔のモデルは展示されていますが、なかなかのイケメンでした。

本人の肖像画と言われる絵が残っていますが、絵の人物に似ています。有名な絵は2枚ほど知られていますが、そのうちの一枚は憂い顔に描かれています。

肖像画、そして復元された顔をみると極悪人には決して見えません。

復元の顔を見るスッキリした顔立ちで憂い顔の人物が寄ってたかって滅多刺しにあって惨殺された、と想像すると、むしろ悲しさを感じます。

悪人ヅラではない、顔復元をみると、リチャード3世善人説を信じ、その証拠探しに走るリチャード3世ファンの気持ちが良くわかります。

リチャード3世の遺骨が語るDNA、駐車場から発見!

リチャード3世らしき遺体がリチャード3世が例のフライヤーズ修道院に葬られている。まさに言い伝え通りでした。

発見された遺骨は、棺らしき箱に収められた様子はなく、布に包まれた形跡もありませんでした。遺骨には手を縛られていた形跡があります。

早速調査が行われました。

リチャード3世はグレイフライヤーズに埋葬の記録がありますが、その修道院もヘンリー8世の宗教改革の時代に破壊され、埋葬された遺体の所在もわからなくなりました。

王族同士の争い・・・これに敗れて敵側になったとはいえ、王であった者がこのような葬られかたされた、と思うと痛々しさを感じます。なぜここまでされなきゃいけないんだろうか?と思うのです。

発見した遺骨は背骨に特徴があり、おそらく脊柱側湾症でしょうか。まさに記述通り!ただしシェイクスピア劇に書かれていたように、身体がねじれた、とか歩行も困難というほどではないとのことです。

頭蓋骨には10箇所ほどの傷が見られて壮絶な最後を思わせます。何箇所も切りつけられた後、左頬の下あたりから突かれた長槍らしき凶器が脳に及び、さらに頭蓋骨を貫通した傷が致命傷のようです。その後も兜を剥がれ、短刀で頭頂を刺し、甲冑を剥いだ後もめった刺ししていた形跡があり、恨みの深さを感じさせます。

傷の結果から、リチャード3世は決して臆病者なのではなく立ち向かって戦死したことがここに示されています。

現代の科学発達の賜物、DNA測定を行い、現存するリチャード3世の姉の子孫との比較からこの遺骨はリチャード3世のものと判明しました。

リチャード3世は直系の子孫を残していませんでしたから。でも一族の子孫って残っている、それだけで感動ものです。

更なるDNA検査から、俳優のベネディクト・カンバーバッチもリチャード3世の遠縁であることが判明したのですから、現在の科学技術はすごいですね。

リチャード3世の縁に連なるもの、と言ってもそのきっかけが知りたいのですが・・・家系図、遺品・・・何があったのでしょうね?

すでにDNAを調べたことのある人、一人一人と照合したのでしょうか?謎です。

また、美食家でワインもよく飲んでいたこともわかってきました。歯の分析結果が証明しています。1日一本のペースで飲んでいたようです。アル中レベルかも。それともストレスから来る飲酒か?

リチャード3世の遺骨を調査した、科学捜査官さんたちご苦労様でした。

現代科学の勝利ですね。思わずCSIのドラマを思い出してしまいました。

肖像画や復元顔に見る憂い顔には、検死報告のアルコール摂取量が多い原因になるストレスがここにも出ているかもしれない。

リチャード3世の埋葬はどのように?参列者に遠縁の俳優ベネディクト・カンバーバッチも参列!

2015年、ついにリチャード3世の葬儀が執り行われ埋葬されました。鑑定を進めていたレスター大学を出発して、最後の激戦地ボスワース(レスターから近い)を周り、レスターに戻り、大聖堂で葬儀が行われました。

葬列は馬で引く霊柩台に乗せられ、騎士の身なりを整えた護衛につき従われました。正式な王としての礼が尽くされました。葬列の沿道には多くの人が集まり、リチャード3世に永遠の別れを告げました。

大聖堂では葬儀の礼拝が挙げられ、追悼の言葉が読まれました。桂冠詩人キャロル・アン・ダフィが追悼の詩を書き、俳優のベネディクト・カンバーバッチが読み上げました。

ベネディクト・カンバーバッチはDNA鑑定からリチャード3世と血縁関係あり、と判明。なんとテレビドラマ「ホロウクラウン」でリチャード3世を演じたのが、カンバーバッチでしたから、なんという巡り合わせ!

エリザベス女王からもメッセージが送られました。

今や、リチャード3世はレスター大聖堂で静かに眠っています。

実に530年ぶりの帰還です。530年ぶりの再埋葬。

葬礼の写真を見ていると、自分には全く関係がない人物なのになぜか涙が出てきそうになります。名誉回復、そして正式に埋葬が行われてよかった・・・と。

リチャード3世悪役はシェイクスピアのせい?

悪人説は悪気はなかったのだけど、シェイクスピアの戯曲のおかげで、リチャード3世の人物像が出来上がってしまいました。

シェイクスピアはエリザベス女王時代に活躍した作家です。エリザベスはチューダー朝の祖ヘンリー7世の孫です。チューダー朝は、ヨーク家、ランカスター家を含む、プランタジネット朝を打ち破って王朝を打ち立てました。

すぐ前の王朝最後の王、リチャード3世を叩けば叩くほど、チューダー朝の正当性は上がります。

リチャード3世は、シェイクスピア戯曲では、悪役が主役です。観客は悪役ぶりに拍手喝采を送るのですが、とにかく悪いヤツです。

陰謀、裏切り、殺人・・・と。しかも見てくれも悪いという。背中に瘤がある、足が悪い、身体がねじれている、と本の表現通り書くと、間違いなく差別用語に引っかかるので書けません。シェイクスピアは文化を伝える大事な作品だし、当時は身体的問題に関するモラルは誰も気にかけない時代でした。

シェイクスピアはリチャード3世と同じ時代を生きた人物ではありません。ですから戯曲を書くにあたり、資料で下調べをしたのですが、シェイクスピア時代にはすでに、リチャード3世悪人像が出来上がっていました。

加えてシェイクスピアの使命は戯曲を面白くすること、人気を取ること。そしてパトロンをたくさん作って報酬を得ること。これは作家ならば至極当然の理です。

ですが人気が出すぎて、後世の人はそれが真実と思い込んでしまったのが運が悪かった。ですからリチャード3世悪人説はシェイクスピアのせいではありますけど、シェイクスピアに罪はありません。

悪気がなかったシェイクスピアさん・・・ちょっとかわいそう。

リチャード3世を悪人にしたいヘンリー7世、彼こそ仕掛け人?

なぜヘンリー7世がリチャード3世を貶めて、自分たちを正当化するのか・・・?それはリチャード3世側の血脈に関係あります。反対に上ばヘンリー7世側に血縁的に不利な面がある、ということです。

ヘンリー7世にとってみれば、リチャード3世が王として最悪ならば、王位を剥奪されて当然という世の中の風潮になってくれればありがたいのです。

ヘンリー7世自らが、仕掛け人となって作らせたイメージの結果が、シェイクピアにみるリチャード3世なのです。

まず、王位継承の血縁関係を覗いて見ましょう。

リチャード3世のヨーク家もリチャード3世が王位を奪ったヘンリー6世のランカスター家もプランタジネット朝の流れを組む王朝です。その先祖はエドワード3世にあります。

ところがヘンリー7世の祖父オウエン・チューダーは全くイングランド王家とな全く関係のない人物です。

ヘンリー6世の母は夫ヘンリー5世に先立たれ未亡人(ヘンリー6世がごくごく幼い時)となった時、彼女の雑務係兼秘書として使えた人物がオウエン・チューダーでした。結果二人は恋に落ちて秘密裏に結婚して、子が生まれやがて孫となるヘンリー・チューダーが生まれるに至りました。王妃であった女性が未亡人になった後の再婚は認められず、ずっと正規の子供として認められていません。

ところでヘンリー・チューダーの父親をエドマンドと言いますが、エドマンドはマーガレット・ボーフォートという女性と結婚します。その女性がヘンリー7世の母になります。マーガレットはランカスター家の地を引くものの、ランカスター家の庶子の子孫でした。神に認められた結婚、それも結婚の祝福を受けてから生まれた子供でないと嫡子と言えない時代でした。

よってヘンリー7世の両親はどちらも王位継承権を持たないもの同士でしたから、当然息子にも王位継承権はありません。

だからこそ、悪行を働くリチャード3世を倒したから、そしてランカスター家の(王家の)血を引いているから、とを無理やり理由づけして、王位に就きました。その際、自分の血統をフランスの王女にしてイギリス王妃だった女性と結婚から生まれた子、という記録も新たに作りました。王位を正当づけるためにはリチャード3世が極悪人でなければならないのです。

ヘンリー7世が仕掛け人となって、リチャード3世を悪者にした理由はこういうところにあるのです。

リチャード3世は再評価されているの? 語られる小説、漫画たち

リチャード3世は本当に悪人だったのだろうか・・・・今も論争が続いています。

ただ、伝えられているような悪人ではない、と現在では考えられています。

肖像画を見ると、リチャード3世は悪人ヅラをしていない。むしろ憂いを浮かべた表情で悪人らしくない。それに対して次の王となったヘンリー7世の肖像画の方がずる賢く見える。

悪人であると、決定づけた事件が幼い二人の甥を殺害したことです。しかし幼い甥を殺す理由があんまりない。このころはまだまだ、ランカスター側、その他の反乱分子が反乱を起こす可能性が高かった時期に、子供を王にするより、叔父のリチャードが王位についた方がはるかに安定します。それにリチャード3世の子供も一人と頼りなかったため、次の王位継承者のために、この時点では甥達にいてもらった方がいいのです。そして甥の母親と和解した記録もあるので、どうもここに疑問点が出てきます。

むしろヘンリー7世の手による暗殺説もあり、ヘンリー7世が王になるときにむしろ邪魔な存在になり得る、という説もあり現在でも謎の事件です。

この謎を使った、小説などがあります。「時の娘」というジョセフィン・テイの小説が有名です。これはあくまでも歴史書ではなく小説なのですが、実に理論の展開が巧妙です。主人公が入院している刑事、というシチュエーションなので、刑事の調査を思わせる手腕に惹きつけられます。小説だから、結末は出されていません。が十分に問題提起の一冊です。

森川久美の「天の戴冠」という漫画は、リチャード3世善人説を表に出した興味深い漫画です。今から30年以上の漫画でもしかしたらちょっと手に入らないかもしれません。

「薔薇王の葬列」現在も連載中の菅野文の漫画ですが、こちらはガラッと視点を変えた漫画です。シェイクスピア原作のストーリーに想像力をふんだんに加えた漫画です。こんな見方もあるのか、と感心する作品です。ネタバレするのでここで内容の説明はしません。

リチャード3世には歴史的に人気があり権威の復活を目指して研究、調査が進められていました。これら研究が実を結び、遺骨の発見、それで一気にリチャード3世の名誉回復、やっとできました。

イギリスのレスターにある大聖堂では、リチャード3世の埋葬場所があります。

またレスターにはリチャード3世ビジターセンターという施設があり、リチャード3世の発見場所も見ることができます。そしてDNA鑑定の手順の説明も付け加えられてあります。

さらにリチャード3世の行った仕事ぶりを示したパネルが展示されています。

いつか是非レスター、訪れて見たいです。

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