「ばけばけ」では岡部たかしさんがキャスティングされた、松野司之介が人気を集めています。
モデルは、主人公 松野トキ こと 小泉セツの、育ての父 稲垣金十郎。
ダメおやじ風に見えますが、実際はどうだったのでしょう、職業にはきちんとついていたのでしょうか?
それでも、史実は、ドラマと同じく愛されキャラだったようです。
主人公に比べ、歴史的スポットが当たる機会は少ないですが、愛されキャラのお父さんの実体に迫ってみました。
「ばけばけ」松野司之介 はダメ親父?
松野司之介(まつのつかさのすけ)は、「ばけばけ」で見た感じでは、ダメおやじですね。
「あげな父上」という言葉が、トレンドになり、その言葉がまさに松野司之介に当てはめられている。
「あげな〜」とは立派な、尊敬に値する ということですが、どうも松野司之介に当たるとは思えないのですが、わざと反対のことを言う、反意語表現というやつです。
松野司之介のモデルの、稲垣金十郎もやはりダメおやじ。
もしかしたら、松野司之介より、ダメおやじかも?
松野司之介は、なんとかしようと、とにかくもがいて色々と試みていたからです。
しかし、結局は空回りしている、というかわいそなうな存在です。
「ばけばけ」松野司之介、モデルは稲垣金十郎
松野司之介のモデルは、稲垣金十郎(いながききんじゅうろう)、小泉セツの養父です。
金十郎の父は、稲垣万右衛門 といい、江戸時代はサムライでした。
稲垣金十郎が生まれたのは、1832年。明治が始まったのは、稲垣金十郎さんが30歳をすぎての頃です。
ということは、稲垣金十郎は、明治という新しい時代に適応するには少し歳をとりすぎています。
30歳をすぎて、藩から給金をもらう身から、急に自分でお金を稼げ、と言われても何をやっていいものか、思いつかないのが普通です。
ということは、ダメおやじというより、何かをとにかくやろうと一心不乱に探し求めた人が、ドラマの松野司之介、だったのです。
結果、何をやってもうまく行かない、働くのをやめる「ダメ親父」になっていましました。
「ばけばけ」松野司之介の死因は?
松野司之介のモデル、稲垣金十郎は、胃潰瘍でなくなります。
1900年 11月19日 享年68歳でした。
「ばけばけ」の、松野司之介も、おそらく、モデルと同じような、最期になると思います。
ビジネスを始めて詐欺にあい、働く気概も持てなかった、苦しい境遇でも最後まで、悪い道に進むこともなく、家族に愛された、良い人物でした。
松野司之介と、稲垣金十郎をなぞるようなドラマ展開が期待できます。
「ばけばけ」松野司之介(稲垣金十郎)、性格は?
実在の、稲垣金十郎は明るい性格の人、そして人が良い、と言われていました。
その様子が、「八雲の妻セツの生涯」という伝記の中で語られています。
松野司之介(稲垣金十郎)、明るい性格?
性格が明るい、ということは下記に引用した小説「八雲の妻 小泉セツの生涯」で語られています。
『連日のよう烏丸通に家来を遣って、好物の菓子を買わせたり、後々まで鳥羽・伏見の戦いをおもしろおかしく子供達に語り聞かせると言った、好人物だったものである』
「八雲の妻 小泉セツの生涯」長谷川洋二
家来に好きなお菓子を買いに行かせるなんて、公私混同のような気がしますが、まだ徳川の時代だったので、主人の言いつけは家来ならば聞くもの、となっていたのでしょう。
家来もそんなに嫌がってなかった様子ですね。
また、鳥羽・伏見(幕末、京都を舞台に行われた戦)という厳しい戦いを面白く話した、というので、創作能力の高い人では、と思わせる人物です。
松野司之介(稲垣金十郎)、人が良い?
人が良い、つまりお人好し、ということが、同じく小説「八雲の妻、小泉セツの生涯」に書かれています。
小説には、
『人の良すぎた彼(稲垣金十郎)は、粗暴な世間の苦杯を喫した後、生活のために奮闘することが困難であった』
「八雲の妻 小泉セツの生涯」 長谷川洋二
とありました。
松野司之介こと、稲垣金十郎は、時代の流れに乗ることができなかった人物で、これだけ見ると、時代の落伍者ではあります。
でも持ち前の明るさに人の良さも加わって、稲垣金十郎は憎めない人であったのです。
「ばけばけ」の松野司之介も、その性格をそのまま映しており、ドラマの中では人気者になっています。
「ばけばけ」松野司之介と、レフカダヘブンとの関係は?
松野司之介(稲垣金十郎)と、レフカダ・ヘブン(ラフカディオ・ハーン)は、松野トキ こと小泉セツとの結婚で、義理の親子になります。
この2人の仲がどうだったか、ということについては語られていないので、想像することしかできませんが、悪いものではなかったのでは、と思います。
稲垣金十郎は、娘 セツ とハーンの結婚後、ハーンの赴任地 東京に夫婦と共に移り住み、そこで60歳ごろに亡くなるまで一緒に住んでいました。
同居という事実から、ハーンも、稲垣金十郎もお互い、嫌いではなかったのだろう、ということです。
それは、稲垣金十郎の人好きのする憎めない性格から推測できます。
稲垣金十郎を、自分を保護してくれる人が必要だったし、ハーンの方も、家族を呼べる人を欲しいと思っていたから、お互いが一緒に生活できたのではないでしょうか。
「ばけばけ」松野司之介の元の身分は?
明治維新の前までは、サムライでした、と言ってもそれほど高い地位にあったわけではなく、中級のサムライです。
松野司之介、武士として
松野司之介(稲垣金十郎)は元は、禄高100石ほどの、武家でした。
明治の初期、元武士は一応、明治政府の方針で、江戸時代かとほぼ同額の給与をもらっていました。
しかし、こんなことを続けている政府は、資金不足に困ったのでしょう、給与をやめ、禄を政府に返上し、代わりに6年分の支給額を一度にもらってあとは無し、という制度になりました。
6年分のお金を使って、元武士たちは、事業を始めるように、と政府から奨励されたのですが、
わずか6年分の給与をもらったから、と言って、元の武士たちが、そう簡単に事業をはじめ、成功を収められるとは思えません。
なにしろ、武士たちは、自分で汗水働いて、お金を稼いだことがないのですから。(浪人は別)
「ばけばけ」の中でも、小泉セツ(松野トキ)の生家 小泉家が織物工業を始めたのも、その政策からですが、結果、うまくいきませんでした。
松野トキのお父さん、松野司之介も、いろいろな職業に手を出しましたが、いつも酷い目に遭ってしまいます。
詐欺にも遭っていましたね。
裁判になったため、お金も失い、結果、「ばけばけ」主人公 トキ(セツ)もせっかく好きになった学校をやめる羽目になりました。
「ばけばけ」松野司之介、牛乳屋に?
松野司之介は、牛乳売りになりましたが、史実の稲垣金十郎さんは牛乳売りにはなっていません。
それどころか、名義貸しをして失敗した後は、仕事らしい仕事をしていません。
稲垣金十郎は、詐欺に遭ってしまった、と人に馬鹿にされたことがトラウマになって、働く意欲を削がれてしまったのです。
稲垣家の働き手は、妻(トミ、ドラマではフミ)、そして娘の セツ(ドラマの主人公 トキ)、なんだかヒモのようなお父さんでした。
とは言っても、稲垣金十郎は、バイト程度の仕事はしていたみたいですよ。
田渕由美子の『へルンとセツ』には、「金十郎は、囲碁を教えていた」ということが書かれています。
でも、ほんの少しの期間だけでした。
稲垣金十郎さんは、プータローっぽいですね、「ばけばけ」の松野司之介さんのほうが、自分にむいた、仕事を一生懸命探していますね。
「ばけばけ」松野司之介、うさぎの詐欺は本当?
松野司之介は、「ばけばけ」でうさぎ売りの詐欺に引っかかって、多額の借金を背負ってしまいました。
史実の稲垣金十郎は、うさぎ売りではなかったですが、事業には失敗しました。
人に騙されたのです。
稲垣金十郎(松野司之介)、事業に失敗!
事業のやりくり失敗、というより、詐欺に引っかかった、という方が近いかもしれません。
借金に苦労している知人の土地や山の名義を、代わりに引き受ける、つまり名義貸しということですね。
しかし、その知人は、名義が稲垣金十郎に渡ったのちも、山の木の伐採を続け、稲垣金十郎を詐欺師扱いしたのです。「金十郎が勝手に、土地を自分のものにする契約書を作った」と。
この事件は裁判まで行きましたが、稲垣金十郎の方の正当性が証明され、無実が証明されました。
しかし、裁判にお金と時間がかかりすぎ、結局、稲垣金十郎は、自分の財産を裁判費用で使ってしまいました。
裁判事件に関しては、孫の小泉一雄が、その著書に書いています。
末代までも残る、悔しさだったのでしょうね。
本当にあった、うさぎビジネス
うさぎをネズミ算のように増やして売る商売は、実際にありました。
史実の稲垣金十郎は、ウサギビジネスに手を染めていませんが、明治の初期には、うさぎが大流行したのはホントです。
富裕層が愛玩用のウサギを飼い始め、それも外来種のウサギが人気で、その交配が流行り、一旗あげようと、ウサギの繁殖、取引を商売にする人が増えてきました。
ウサギは爆発的な人気を集めますが、やがて、ウサギの飼育売買を制限する法律ができる、ウサギに税がかけられる、などで、ウサギの人気は、2年以内に消えました。
ウサギは楽に繁殖できるので、手軽さに惹かれて、士族が手を出したものの、人気没落までの期間が早すぎて、成功できた人はほとんどいませんでした。
史実の、稲垣金十郎は手を出しませんでしたが、「ばけばけ」の松野司之介は、儲け話に目が眩み手を出して、大失敗の結末でしたね。
「ばけばけ」松野司之介 役 岡部たかしさんにキャスティング!
「ばけばけ」で松野司之介 役についたのは、岡部たかしさんです。
岡部さんは「虎に翼」に続いて、またまたお父さん役です。
岡部たかし さんの役に向けて思われていることは、まず、時代に翻弄されてしまった人物ということです。
視聴者は、自身に叩き込まれている武士道と時代の流れに悩む人、を番組から感じるでしょう。
ですが、娘 トキ(小泉セツ)のためなら、なんでもしてやる、という非常に思いやりの深い父の姿を見ることもできます。
トキ は実子ではなく、養子なのですが、それでも実の子であるかのように、自然に娘に愛情を注げる父親は、普遍的な父親の姿として、感動を視聴者に感じさせます。
また、人がよく、騙されやすいけれども、どうにも憎めない、ただのダメおやじ出ないところが、この番組の見どころの一つです。
まとめ
「ばけばけ」の主人公、松野トキ の父 松野司之介 のモデルは実在の 稲垣金十郎でした。
何をやっても、うまく行かない 松野司之介はダメ親父に見えますが、実は性格もよく、家族思いの良い父親であることがわかります。
中年になっての、周囲の変化は非常に対応が難しい、ことを教えてくれた人物が、松野司之介だったのです。

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