ミスターローレンス、誰?セリフが有名。実在です!坂本龍一出演!

ミスターローレンス・・・「誰?」と思われるかもしれません。しかし「メリークリスマス、ミスターロレンス!」というセリフを聞くと思い出していただけると思います。

ミスター・ローレンスは実在しました。映画も実話が元になっています。

坂本龍一、デヴィッド・ボウイ、と有名人が出演して話題になりました

実話と映画どんなところが違うでしょう?

また坂本龍一の音楽は素晴らしいです。

2023年にはデジタルリマスター版が上演されます。

「ミスターローレンス」とは、誰?

ミスターローレンスは映画「戦場のメリークリスマス」の登場人物です。映画はミスターローレンスの目を通して描かれています。

ミスターローレンスは実在の人物で、「ローレンス・ヴァン・デル・ポスト」という名前です。南アフリカ生まれのイギリス人作家です。

1940年にイギリス陸軍に入隊します。士官学校へ行き、将校になって兵役に参加しました。

1942年には、オランダ領東インド(インドネシア)に派遣されます。当時のインドネシアは日本軍が侵攻しており、インドネシアにいたヨーロッパ人を助け出すためでした。

しかし、インドネシアは日本軍の手に落ち、ヨーロッパの軍人は捕虜収容所に送られました。ローレンス・ヴァン・デル・ポストも日本の捕虜収容所に行きました。

捕虜収容所での生活が、後に書物となり「メリークリスマス ミスターローレンス」(戦場のメリークリスマス)の原作になりました。

1906〜1996年の90年にわたる人生でした。

後に、今のイギリス国王、チャールズ3世の皇太子時代の側近、そしてウィリアム王子(今の皇太子)の代父となりました。代父とはキリスト教で、子供の洗礼式に立ち会い、神に対し証人となる役割を果たす人物です。高貴な人につきます。英語でGodfatherと言います。

「ミスターローレンス」、映画では

「戦場のメリークリスマス」(Merry Christmas, Mr.Laurens)は、ローレンス大尉(インドネシアに来ていた)の捕虜収容所での実話に基づいた小説が原作です。「影さす牢格子」、「種子と蒔く者」の2作品がこの原作に当たります。

ミスターローレンスは捕虜収容所であった出来事・・・・これが事実だとするとショッキングです。

捕虜収容所の所長、「ヨノイ大尉」(坂本龍一)のもとに、スパイの容疑をかけられたイギリス軍兵士「セリアズ」(デヴィッド・ボウイが演じる)がやってきます。この二人が物語の中心人物です。

その様子見つめる、ローレンスの観察眼がこの映画のキモです。映画を通してローレンスの目は、公平に状況を見ようとします。

ですが、日本と西洋の違いで、ローレンスは時には怒り、時には戸惑い・・・画面を通してローレンスの感じ方が伝わってきます。

新たに収容所にやってきたセリアズは魅力的な人物。厳格で禁欲的、そして潔癖であったヨノイ大尉は徐々に惹かれていきます。その心情を隠すように、ヨノイ大尉は訓練に励みます。

この惹かれ合いを、男色と見る向きもあります。デヴィッド・ボウイと坂本龍一の共演だから、同性愛的な話題が出たのかも知れません。

しかし、性的意味だけでの惹かれあいではないと思うのです。

セリアズには弟がいて、その弟は身体的に劣ったところがありました。セリアズはずっと弟を気にかけ、可愛がってきました。弟は歌を歌うのが大好きでした。

しかし同じ学校に入っていたことから、弟がクラスメイトにからかわれていた時に、弟を見捨ててしまったのです。優秀と言われていたセリアズは、弟が恥ずかしくなったのかもしれません。その日以来、弟は歌を歌わなくなってしまったのです。

弟を裏切ってしまったことはセリアズの心を苦しめていました。セリアズには許しが必要だったのです。

ヨノイ大尉が自分の感情を爆発させて、ある捕虜を切り捨てようとした時、セリアズは大尉を抱きしめて、その頬に口づけをします。この行為が耐えきれなくてヨノイ大尉は気を失ってしまうのですが・・・・

このセリアズの行為は、恋愛感情でなはく、「赦しの接吻」そんな言葉が似合う行為です。キリストのような寛容さを表しているのではないかと思えるのです。

ローレンスは、そこに西洋人が持つ、キリスト教的「赦し」を見て取ったことでしょう。

このような西洋的な、思想を理解し、全世界に感動を与えた大島渚監督って、並の人ではないと思った瞬間です。

「メリークリスマス、ミスターロレンス」、セリフの意味

映画「戦場のメリークリスマス」で一番有名なセリフ、「メリークリスマス、ミスターロレンス」、「ファーゼル クリスマス」。この言葉は英語のタイトルでもあります。

ハラ軍曹は、タケシが演じました。

ハラ軍曹は、この時酔っ払っていました。そして、ローレンスとセリアズを釈放すると言います。それもとてもにこやかな表情で。いつものハラ軍曹の態度からは全く想像がつきません。

釈放の理由は、疑ったセリアズが犯人ではなかったことでした。セリアズと共にローレンスも許したのです。

実は、収容所に無線機を持ち込んだ捕虜がいたらしく、犯人探しをしていました。そこでスパイ容疑で収容所にやってきた、セリアズが疑われたのですが、真犯人が見つかりました。その疑いに対するお詫びの印だったのでしょうか?

セリアズとローレンスは起こったことに、戸惑っていました。そして同時に、私たち観客もこのハラ軍曹の心のうちが知れず、戸惑います。

ハラ軍曹は、日本軍人の中でも暴力的です。しかし、セリアズは「変な顔だ、しかし目は美しい」と描写しています。

ハラ軍曹は軍律に忠実です。時には暴力に訴えますが、仲間を守ろうとする意識も強いです。例えば自殺した日本軍人を戦死扱いにした理由からわかってきます。戦死ならば、家族に遺族年金が出るからと言う理由でした。目の美しさは心の清らかさを表しています。そこをセリアズは見抜いたのでしょうか。

ローレンスとセリアズを赦したのは、赦したい自分の気持ちをキリスト教の、しきたりに合わせることで表現したかったからでした。

「メリークリスマス ミスターローレンス」、この作品の意味は、「赦し」なのです。この赦しはもはや神の領域に近いのかも知れません。

ミスターローレンスと、坂本龍一の役どころ

坂本龍一が演じた役は「ヨノイ大尉」といい、この映画の主人公です。ミスターローレンスこと、ローレンス・ヴァン・デル・ポストの目を通して、「ヨノイ大尉」が語られます。

原作者のローレンス・ヴァン・デル・ポストは・・・

「映画のヨノイは、私の小説の中のヨノイの元となった日本軍の将校に、まさしく本当にそっくりすぎるほどそっくりだったので、実は私は驚いているんだ。みていて本当にショックだったよ。あの奇妙なフィーリング・・・」ということを1983年に語っていた、とのことです。

「ヨノイ」の映画と原作の違うところを挙げてみましょう。

映画の、ヨノイは戦後すぐに処刑されましたが、原作では、日本に帰国しています。映画の中での処刑はローレンスの語りでした。多分、今でいう「ナレ死」に当たりますかね?(実際しんた場面は映さないのですが、『〜はこうして死んだ』とナレーションで伝えられることです)

映画では、デヴィッド・ボウイ演じる「セリアズ」の髪をその遺体から切りとり、その髪をヨノイの故郷の神社に捧げてくれと、ローレンスに頼んだ、と言っていました。ローレンスは処刑前のヨノイに面会できた、という話でした。

しかし実際では、ヨノイは帰国して自分の手で、セリアズの遺髪を神社の聖なる火に捧げた、ということが原作に書かれています。多分、神社の「お焚き上げ」での供養の形ではないでしょうか。

モデルになった人物が誰か・・・それは書かれていません。原作や映画によると、「ヨノイ」は二・二六事件にも関わった人物らしいです。

二・二六事件に関わり、尉官となり、収容所の所長を務めた人物が、戦後、お咎めなしでいられたわけはないと思うのですが・・・本当のところはどうだったのでしょう?

坂本龍一、「メリークリスマス、ミスターローレンス」作曲

「メリークリスマス、ミスターロレンス」における坂本龍一の1番の仕事といえば、映画音楽の作曲でしょう。

この音楽は1983年、英国アカデミー賞の作曲賞を受賞しました。

メインテーマが特に秀逸で、東洋と西洋の接点を感じさせます。オーケストラバージョンの主旋律では竹の鳴るような音に聞こえますが、グラスハープのサンプリング音が使われています。低音部分は少しチューニングがずらされていて、東洋の神秘さを感じさせる音作りです。

他の曲には一部、インドネシアの楽器、ガムランを使いました。

「種子と種を撒く人」という曲もありますが、これはローレンス・ヴァン・デル・ポストの作品から取ったタイトルと思われます。変拍子が使われており、しかもその和音がだんだんと転調されてくるところに、登場人物たちの新たな感情を表しています。

セリアズの弟が歌った、歌がありますがこれは非常に美しい曲です。聞くと涙が溢れそうな気持ちになります。

「メリークリスマス、ミスターロレンス」(戦場のメリークリスマス)の音楽はピアノ版もあります。ピアノ版は坂本龍一自身もライブで演奏しています。

ピアノ曲はオーケストラ版とは少し、違った聞こえ方がします。オケ版は西洋と東洋の融合というイメージがありますが、ピアノ版の方が西洋寄りに聞こえます。

特に高音部のピアノの動きはフランスのドビュッシーを思い出させます。と言っても、ドビュッシーが東洋の影響を受けていると言われている作曲家ですので、何らかの形で、西洋と東洋の融点が取り言えられている作品です。

サウンドトラックは、どれも映画の内面を大きく増幅させる効果があり、あらためて坂本龍一という人物の音楽的才能に驚異する内容です。

映画なしで、サウンドトラックだけでも、音楽として十分成立するアルバムです。

「戦場のメリークリスマス」の音楽担当は、坂本龍一が自ら望んだものだと言われます。映画出演の話が先にオファーが来ていたのですね。これにはびっくりです。坂本龍一というと、俳優というよりまずミュージシャンですから。

コメント

  1. 坂本格太郎 より:

    「原作や映画によると、「ヨノイ」は二・二六事件にも関わった人物らしいです。」についてですが、映画を見てどう書かれているのか詳しく知りたいと思い「原作」を読んだのですが、どこに書いてあるのか分かりませんでした。どのあたりに書いてあるのか教えてもらえませんでしょうか?

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