トールキンは天才!世界観は?人工言語の作り手。ベオウルフからの影響?

トールキンの著作「ロード・オブ・ザ・リング 王の帰還」がアカデミー賞の11部門で受賞したのは、2004年のことでした。

「ロード・オブ・ザ・リング」は3部作で、「王の帰還」は第3部、最終章です。

20年近く前のことなのに、その魅力は今でも観客を惹きつけます。再放送は繰り返され、関連した作品「力の指輪」が有料放送ながら人気を集めています。

作品の魅力が続く作家トールキンは天才だったからでしょうか?

トールキンが持っていた世界観、とは何でしょう?

さらに、物語の中に出てくる言語とは?トールキンが作った言語のようです。

トールキン、天才!

トールキン。その名は、ジョン・ロナルド・ロウエル・トールキン(John Ronald Reuel Tolkin)です。1892〜1973年・・・イギリス人です。

「ロード・オブ・ザ・リング」3部作、「ホビット」3部作が映画にもなり特に有名ですが、「ロード・オブ・・・」の前の時代を描いた「シルマリル」も有名です。

「ホビットの冒険」は1937年、「指輪物語」(ロードオブザリング、原題The Lord of The Rings)は1954〜55年、にそれぞれ出版された小説です。

今から70年近くの小説ですが、今でも人気があり、映画化され、それも繰り返し放映されているところが、トールキンは天才である、の証明でしょう。

「ホビットの冒険」は児童むきの小説でしたが、想像以上に大人のファンが付き、「指輪物語」の執筆に至ったわけです。その内容も、「ホビット」の登場人物の後を継ぐような形で登場しており、全てが繋がって見える一大ファンタジー世界が出来上がりました。

トールキンは、言語学者であると同士に文献学者でもありました。言語学者の立場から古英語の研究、そして古英語で書かれたイギリスの古い叙事詩、「べーオウルフ」の研究では第一人者と言われています。

他のヨーロッパ諸国の伝承作品のエッセンスを、自分の小説に盛り込みました。

イギリスで大人気の伝説「アーサー王」からの要素も取り入れています。「アーサー王」全般にわたって出てくる、冒険つまり「クエスト」が「指輪物語」の「滅びの山」への道、に重なります。

トールキンは、第1次世界大戦に従軍しました。戦争で得た経験、自分の友人、思い出、それら全てがトールキンの小説に生かされています。

いまだに世界中から愛され、「ロードオブ・・・」に発想を得た作品が生まれています。

ゲーム、「ドラゴンクエスト」、「ファイナルファンタジー」などは「ロードオブ・・・」の世界をお手本にしています。

自分が学んだこと、自分が興味を持った研究、戦争の記憶、友人との思い出、これら全てを拾って書き込んだ小説が、私たち、後世の人々を惹きつけるのです。トールキンは天才!と、思います。

トールキンの世界観。中つ国とは?

トールキンの小説で特徴があるのは、小説の世界観。その場所とは「中つ国」(なかつくに)です。

英語で言うと、Middle-earth。英語をカタカナで読むとミドルアース。短くしてミッドアースとも言います。英国の一部とヨーロッパの北欧で昔使われていた古ノルド語ではミズガルズ。空と地下の間、人間たちが存在する、「大地」です。

トールキンが創作した世界ですが、もし人類に置き換えたら、今から6000〜7000年前という設定です。

では「中つ国」はどういう国だったでしょう?人間、エルフ(日本語に訳すると妖精、ヨーロッパの伝説に登場する種族)、ドワーフ(小人と訳される)、ホビット(小さい人)が一緒に住む世界です。

トールキンの小説を読むと、中つ国のような場所が本当に存在しているような錯覚にとらわれます。

「中つ国」での争いは非常にリアルに感じられます。そこでの戦争は征服、支配を目的としているからです。実世界の戦争と大差ありません。戦争はトールキン自身が従軍した記憶にインスピレーションを得て書かれています。

ですから一層、「中つ国」を身近に感じられるのです。

身近に感じる設定だから、今でもファンタジーには、人間とその他の生き物が共存する世界が作られるのです。

例えば「ハリー・ポッター」の作品では、人間と魔法使いが一緒に住んでいます。あなたの隣の家にも魔法使いがいるかもしれない・・・と。

トールキン、人工言語を作る

トールキンは言語学者でした。

トールキンの言語との最初の出会いは、戦争を終えてから初めて得た仕事が、英語辞書の編纂作業でした。ゲルマン語系統の単語を担当しました。そこからゲルマン系の言語に興味を持つようになったと思われます。

その後は大学に戻り言語学の勉強をし、アングロ・サクソン語の教授となりました。アングロ・サクソン語とは今日の英語のベースになった言語です。

トールキンが作り出した言語も、アングロ・サクソン語、古ノルド語、ゲルマン系言語から作り出しました。

創造した言語、約20以上。

文字も作りました。「ロード・オブ・ザ・リング」のテーマになっている、サウロン(邪悪の王)の指輪に刻まれていた文字です。「一つの指輪は全てを統べ、一つの指輪は全てを見つけ、一つの指輪は全てをとらえて、暗闇の中に繋ぎ止める」という文句でした。作品の中でも、なかなか読めない言語でしたね。

何でこんなに言語が作れるのでしょう?

辞書を作る現場で働いたのが一つのきっかけではありましたが、トールキンは10代の頃から従兄弟と遊びで言語を作っていたところが始まりでした。

大学時代(オックスフォード大学)時代にラテン語、アングロ・サクソン語、古英語、中英語、古ゲルマン語に特に興味を持ちました。これらの言語が人工言語への手がかりとなりました。

オーク語(オークはロード・オブ・ザ・リングで、主人公たちの敵になる種族、翻訳ではオーク鬼)としては古英語を使いました。

トールキンとベオウルフ

「ベオウルフ」とはイギリスの最古の叙事詩です。イギリス文学の歴史には一番最初に上がってくる本です。古英語と言われる、文字通り古い英語で書かれています。古英語はちょっとやそっとでは読めない表記で、専門に勉強をしないとできません。ですから今では現代語訳が出版されています。

現代語訳に直した一人がトールキンです。

「Beowulf」と綴られますが、日本語で発音する場合「ベオウルフ」とも「べーオウルフ」とも読まれます。

さてどんな話かを簡単に紹介しましょう。

時代は古代デーン人がブリテン島に住んでいた時代。叙事詩ができた時代が8世紀あたりと言われているので、それ以前と思っていいでしょう。

王国を苦しめていた、怪物グレンデルを、王の名を受けた勇者「ベオウルフ」が退治する話です

まず、怪物の腕を切り落とし、怪物を撃退しました。その後怪物の母親がグレンデルの腕を取り返しにベオウルフの元にやってくる。

ベオウルフが森まで追い詰めて母親を成敗します。

ここで一旦平和になります。しかしやがて強力な竜が暴れ、再び王国は危機に瀕します。この時すでに年とっていたベオウルフが再び剣を持って立ち上がり、竜と共倒れになって龍を倒しました。

以上、勇者ベオウルフの生涯にわたる、戦いの物語なのです。

日本人にはあまり馴染みのない話ですが、英語圏の人には幼い頃からとてもよく知っている話なのです。イギリスやアメリカの子供に聞くとほとんどの子供が知っています。

トールキンは古英語を研究していたので、当然叙事詩「ベオウルフ」に興味を持ちます。トールキンはベオウルフの世界に魅せられてしまいました。

人間と、怪物、竜との戦い。人間界に竜が存在すること。王家の系譜の話。全て「指輪物語」(ロード・オブ・ザ・リング)、「ホビット」に出てくる要素です。これがファンタジーのエレメントと言われる源になったと言って過言ではありません。

もうひとつ、トールキンが夢中になった文学があります。こちらは「アーサー王」の一連の物語です。こちらもアーサー王誕生の秘密。特別な剣の存在。冒険、聖杯探究・・・ファンタジー感満載です。

私としては、「ベオウルフ」より「アーサー王」の方が影響が大きいと思いますが、言語的なところから見れば、「ベーウルフ」のほうが、影響をより多く与えた作品かもしれません。

トールキンの影響。ルイスとの関係

イギリスのもう一人のファンタジー作家、C.S.ルイス(クライブ・ステープレス・ルイス)。アイルランド系イギリス人です。

「ナルニア国物語」がルイスの代表作です。

オックスフォード大学で古典語、英文学を勉強し、その後第1次世界大戦に従軍したのですが、退役後はオックスフォード大学のモードリンカレッジでトールキンと出会います。

ルイスは、その後はケンブリッジ大学のモードリンカレッジに移り、中世、ルネサンス期英文学教授を務めました。大学が違うのに、中にあるカレッジの名前は同じなのですね。

「ナルニア国物語」が書かれたのは1950〜56年頃です。

トールキンとは、同じように古い時代の英文学を研究していた関係から、お互い友情を感じていました。それにどちらも第1次世界大戦に参戦し、負傷も経験し、同志のような関係でもありました。それにどちらもファンタジー系の児童文学を描いていましたから、お互い影響を受けることがあったようです。

両者の小説の違いを挙げるなら、トールキンの世界は、「中つ国」と呼ばれ小説の登場人物は最初から「中つ国」に存在するところから始まりまります。

ルイスの世界は、同じように「中つ国」のような国が出てきますが、この国へは現実の世界のあるものを通して、「中つ国」に向かう仕組みになっています。

「ナルニア国」の場合は、クローゼットの中が異世界への出入り口になっていた、というようにです。この仕組みは現代の「ハリー・ポッター」がこの手腕を踏襲しています。ハリー・ポッターでは9と4分の3番線のプラットフォームを異世界の境界線として演出しています。

ただし、「ハリー・ポッター」では、同じ街に人間(ハリーポッターの世界ではマグル)と魔法使いが一緒に住んでいたので、トールキン的な要素も兼ね備えています。

しかしトールキンとルイスはやがて、疎遠になります。ルイスの小説のほうが売れ出したのです。トールキンには、焦りがあったのかもしれません。

二人が離れたのは、それぞれの宗教観が関係していました。トールキンはカトリック教徒でした。

ルイスの場合は、妻がキリスト教徒ではありませんでした。いくら近代に入っているとはいえ、まだまだキリスト教に属さない人は、世間(キリスト教国の)から後ろ指を差される存在でした。

結局、世間の批判が耐えられなかったのでしょうか?妻はキリスト教に改宗しました。それが夫と共に入ったのが、英国国教会でした。

二つの対立する宗派に分かれたことで、トールキンとルイスは、友人関係を解消します。

「指輪物語」、「ホビット」とトールキンの物語は映画化されました。

ルイスの「ナルニア国物語」も映画化されました。ですが、こちらは全シリーズは映画化されていません。

一方、トールキンの作品は、本人の書いた作品だけでなはく、トールキンの「指輪物語」を軸にしたドラマが、新たに創作されています。

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