ハリウッド制作のドラマ「shogun」が、優れたアメリカドラマに贈られるエミー賞を受賞しました。
これは作品賞だけでなく、主演の真田広之さんも受賞しました。
日本の戦国時代を制し、幕府を開いた徳川家康にインスパイアされた人物、吉井虎永が「関ヶ原」を戦うまでの過程を描いています。
吉井虎永という人物の実在性を見つけながら、その中からどんな徳川家康が見られるか、調べてみました。
吉井虎永は実在人物?
「SHOGUN」の主人公、吉井虎永は架空の人物です。
ただし、作品は、「『徳川家康』をインスパイアした」ということです。
インスパイアとはどういうことかというと、「触発されて」という意味が当てられていますが、わかりやすくいうと、「ヒントをもらって」ということでしょうか。
日本の戦国時代に、日本国に流れ着いたイギリス人が日本の、社会制度、生活に驚いたことをドラマに描いたドラマです。
日本人俳優、真田広之が演じる「吉井虎永」という人物像をが非常に生き生きと演じているドラマなので、つい実在の人物かと、思ってしまいますが、違います。
もっと簡単な言い方をしてみると、「家康らしい人物を作り出してみよう」ということ、と思われます。
その結果、私たち視聴者が期待している家康像が「SHOGUN」の中に現れている、
しかも日本人が感心するほど、日本人らしさが表れている、そんな映画になりました。
shogunの中の吉井虎永
「shogun」は、カリスマ性を持つ吉井虎永という人物が、どんな過程を経て将軍になっていくか、ということを書いたドラマなのです。
吉井虎永の人物像を考察していくには、まずあらすじをざっと見るところから始めてみましょう。
「shogun」のあらすじ
ドラマは、10話まである連続ストーリーです。
吉井虎永の大きな戦いに向けて動いていく戦国ストーリーが大きな軸です。
三浦按針の船が難破して、三浦按針が日本に来るところから始まり、吉井虎永と三浦按針との交流で進んでいきます。
三浦按針はイギリス人であるため、日本のカトリック界は警戒します。
というのも、1600年頃のイギリスは、カトリックから離れたイギリス国教会という制度になっており、カトリック教会とは、争っている間柄だったからです。
吉井虎永は、キリスト教界の対立を利用して、自分の立場を作り上げようとしていました。
1600年ごろの日本は、太閤(豊臣秀吉にあたる)が亡くなり、武家は勢力争いにくれていました。
対立の中心人物は、吉井虎永と石堂和成(いしどうかずなり)。
石堂和成は、歴史上では石田三成にあたる人物です。
二大勢力の争いに、安針と戸田鞠子が巻き込まれていきます。
最後は、鞠子は命を落とすこととなり、その責任の追求を、吉井虎永は相手方に求めます。
やがて、吉井虎永と石堂和成、両方の戦いが始まる、という最後でした。
吉井虎永と戸田鞠子
「戸田鞠子」(とだまりこ)は、細川ガラシャ夫人に相当する役なのですが、「戸田鞠子」は細川ガラシャと違い、家康との接点があります。
実際の細川ガラシャ夫人のように、謀反人の娘ながら、戸田丈太郎(細川忠興、にインスパイアされた登場神仏)と結婚しています。
戸田丈太郎はその父と共に、吉井虎永の元に仕えているといるため、鞠子もまた吉井虎永に仕えています。
ドラマの中で重要な役割を果たす、ジョン・ブラックソーン(のちに按針となを与えられる)との通訳を務めます。
戸田鞠子自身も物語で重要な役どころです。
最後に命を落とすこととなり、それがやがて関ヶ原の戦いにつながっていく伏線を見せています。
ちょっと気になるのが、戸田鞠子、英語がうますぎるのです。
三浦按針が日本に流れついたところから、英語が話せる日本人がいてもおかしくないのですが、流暢すぎるのも、違和感が感じられるのですが。
アメリカで放映されることを、前提としてドラマを作っているから、仕方ないのでしょうか?
shogunにはなっていない吉井虎永
「SHOGUN」というタイトルですが、吉井虎永は、物語の最終回まで見ても、幕府の将軍にはなりません。
それなのに、このドラマのタイトルは「SHOGUN」なのです。
ドラマの、テーマは、吉井虎永の人間的なスケールを描いた、といえます。
ですから、関ヶ原の戦い直前で終わったこのドラマは、吉井虎永が将軍になる過程と確実な可能性を出したストーリーなのです。
吉井虎永のモデルは?
吉井虎永のモデルは、徳川家康です。
吉井虎永がかぶっている兜には、きちんと徳川の紋所、「三つ葉葵」がついてます。
物語の中で使われている地名は、実際のものなので、吉井虎永はかなり実在の人物に見えてしまいます。
それならいっそのこと、徳川家康のドラマにしてくれらばいいものを、と思うのですが。
あえて徳川家康によく似た人物を、出すことで、ドラマのオリジナル性を作りたかった、というのが原作者の意図なのでしょう。
徳川家康が登場するドラマで、お馴染みの地名が出てくるものですから、吉井虎永は家康の家臣かな?と思ってしまうほどです。
それほどに、うまく映画にピタッと、ハマりこんでいた役でした。
しかし、徳川家康をあらかじめ知っている日本人にとなら、「家康に似ているけれど、誰だろう?」という疑問を持つのも事実です。
吉井虎永、徳川家康らしいところ?
「SHOGUN」の物語を、「徳川家康」など、実名を使ってくれれば、もう少し日本人には理解しやすいのに、と思っていたのですが。
徳川家康がモデル、と言っても、2024年度NHK大河ドラマ「どうする家康」の松本潤演じる、家康とは、随分違います。
「SHOGUN」では、自分の信念を迷うことなく貫く姿勢を見せる、家康。
対する「どうする〜」では弱い面を持ち合わせる人間、徳川家康をえがいていました。
違うところは、吉井虎永が強くカッコ良すぎたこと。
似ているところは、吉井虎永が置かれ立場が家康とおなじだったこと。
そして、「たぬきオヤジ」の性格でしょう。
吉井虎永と徳川家康、どこが違う?
「SHOGUN」の吉永虎永は、戦国時代最強の武将、と言ってもいいくらいです。
そこが、実際とは違います。その強さは家康以上と見て取れました。
しかも、まだ幕府の将軍になる前から、カリスマ性持ち合わせているところも実物以上です。
それに、策略上手で、いつも一歩先を見つめている感じでが見て取れます。
側近に対してでさえも、隙を見せていません。
この辺りは、成長してきた家康と少し近いかもしれない、と思わせるところです。
実際の「家康」の物語とは少し構成が違います。
特に冒頭の部分は、家康が大坂城に、人質としてとらわれ、そこから脱出していくという手腕が、実際にはないエピソードです。
人間関係の構成は、多くの面で似ているのですが、フィクション部分もたくさん出てきます。
吉井虎永から感じられる家康像は?
ドラマの仲の徳川家康らしき面は、まず設定です。
太閤亡き後、日本の政権は五大老に任されており、その一角にいたのが、徳川家康でした。
次には、我慢強い性格です。
もし徳川家康の性格を、一言で表すなら「鳴くまで待とうホトトギス」と言われている通り、非常に忍耐強い、性格が、ドラマで表現されています。
そして「たぬきおやじ」なところです。
徳川家康は、歴史上 「たぬきおやじ」と見られていますが、吉井虎永の場合、たぬきおやじっぽくは表面的には見えませんが、実は「たぬきおやじ」要素をいっぱい持っています。
なにしろ、吉井虎永は、見た目がかっこいいので、たぬきおやじ度が表面に、出て見えないのです。
それでも、画面で見られる、吉永虎永の年齢は、家康に近い感じで、良いのではないかと思いました。
吉井虎永と織田信長の出会いがない!
「SHOGUN」は、秀吉とみられる人物の死後から始まっています。
実際では、家康は秀吉の時代から、力を着々とつけていきました。
その前の主君、織田信長の時代は、家康は信長の力を見せつけられて、家康としてはまだ用心して動いていました。
その面が、家康の弱さなのですが、「SHOGUN」ではその弱さを、出していません。
信長時代の辛さを乗り越えて、「SHOGUN」のドラマに登場した、そんな感じです。
吉井虎永の役は?
ドラマで、吉井虎永の役をキャスティングされたのは、真田広之です。
真田広之は、もともと日本でもアクションを学び、しかも日本舞踊も勉強したため、身のこなしが迫力があり、しかも美しい。
かつて、日本の大河ドラマ「太平記」で、足利尊氏にキャスティングされていた時も、その乗馬姿に迫力がありました。
その後も、ハリウッド映画で、「ラストサムライ」に出演し、トム・クルーズや渡辺謙と共演し、着々と人気を集めていった俳優です。
そのため、画面から伝わってくる、迫力は半端ない感じです。
ドラマ「SHOGUN」では、主演の他に、プロデュースも務めドラマの中に、「日本」というものをふんだんに取り入れていました。
衣装、建物(城)にもこだわりました。
そのために、日本人が見ても、十分に見て楽しめる映画になった、と思います。
吉井虎永の息子
吉井虎永には、吉井長門(よしいながと)という息子が、ドラマには登場します。
次男という設定、徳川家康に当てはめると、結城秀康かな?と思うのですが、制作者側は、結城秀康をインスパイアした形ではない、と言っています。
作り手がわは、松平忠吉(まつだいらただよし)を意識している、とはありますが、役的に見て、私は松平信康(まつだいらのぶやす、家康の長男)の方が思い浮かびます。
どんな役かというと、手柄を取ることを目的として、情熱的な性格で、衝動的に動く人物です。
父、吉井虎永を非常に尊敬しています。
しかし最後は、死で終わります。
織田信長に相当する人物からの命令で、命を落とすわけではないので、松平信康とはちょっと違うかもしれません。
吉井長門の場合は、忖度する信長がいないので、そのあたりをみると、信康には当てはまりません。
松平信康と、松平忠吉の両方の性質をあわせ持った登場人物、というのがここでは適切だな、と思いました。
まとめ
「SHOGUN」のドラマは、これで2度目の映像化です。
1980年に作られていた「Shogun」は、リチャード・チェンバレンがジョン・ブラックソーンで、ブラックソーン絡みた日本像が中心となった構成でした。
その時の、吉井虎永 は三船敏郎でそれはそれで、日本性をよく表していました。
ですが今回の場合は、吉井虎永中心の、構成で日本をかなり意識した作品に仕上がっています。
その日本度満載は、映画「ラストサムライ」以上です。
日本人の出演者の皆、日本語を話し、戦国時代感満載です。
1980年放映の時は「shogun」という言葉が外国にも流行りました。
今回はどんな、日本ブームが起こるでしょうか?
続編を望む声もあるようですが、このままで終わったほうが、吉井虎永という人物を通しての戦国時代の日本が表現されていて、いいと思うのですが。
世の中の人はどう思うのでしょうね?
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