「ジェーンエア」、バーサの存在?時代背景、あらすじ簡単に

シャーロット・ブロンテの代表作「ジェーン・エア」がミュージカルになっています。

作者シャーロット・ブロンテが生きた時代は、女性が小説を書いても認められませんでした。

どんな生涯を送ったのでしょうか?家族はどうだったのでしょうか?

シャーロット・ブロンテの「ジェーン・エア」にはジェーン・エアの心情を書き表した小説です。当時の人たちとの考えが、シャーロット・ブロンテとどのくらいかけ離れていたかが物語の中に読み取流ことができます。

「ジェーンエア」はシャーロットプロンテ自身がモデル

「ジェーン・エア」は作品名ですが、この作品の主人公の名前でもあります。ジェーン・エアの苦難を乗り越えていく物語です。

単なる成功物語とも、シンデレラストーリーともちょっと違います。

「ジェーン・エア」は作者シャーロット・ブロンテ自身を映して書いた小説と言われています。

「ジェーン・エア」との共通点を挙げてみましょう。

  • シャーロット・ブロンテとジェーン・エア、どちらも母が亡くなり、叔母に育てられています。シャーロットの場合父は生きていますが。
  • どちらも寄宿学校に行く。実際にシャーロット・ブロンテが過ごした「カウアン・ブリッジ校」が物語の「ローウッド慈善学校」のモデルです。どちらも衛生環境が悪かったでした。
  • シャーロット・ブロンテの姉マリアはカウアン・ブリッジ校で、肺炎にかかり亡くなります。この姉が、物語ジェーンの最初の親友となる、ヘレン・バーンズのモデルです。ヘレン・バーンズの死亡原因は結核でした。
  • 家庭教師として働く。これもシャーロット・ブロンテとジェーン・エアに共通する内容です。
  • 恋愛。こちらもよく似ています。シャーロット・ブロンテは教師と恋に落ちます。ジェーン・エアは自分の雇い主、地元の名家の当主と恋仲となりました。
  • 聖職者との関係。どちらの人物も聖職者が絡んできますが、その結果は違っています。シャーロット・ブロンテは牧師と結婚します。一方ジェーン・エアは牧師からプロポーズされますが、断ります。すでに心を決めた人がいたからです。
  • どちらも、苦難の末、愛を得ることができました。

こうしてみると、「ジェーン・エア」はシャーロット・ブロンテの人生そのものと言ってもいいほど似ています。ですから作品の中で語られる「ジェーン・エア」のモノローグはシャーロット・ブロンテの心の声と思います。

「ジェーンエア」バーサとは誰?

「ジェーン・エア」にバーサという人物が出てきます。バーサ・メイスンという名前の女性です。

ジェーン・エアが家庭教師として働いた家の当主、エドワード・ロチェスターの妻でした。小説の中では、ジェーンとロチェスターの仲を阻む悪役的存在に見えます。

実は、この女性も時代に巻き込まれた悲劇の人物、と見ることができます。

イギリスの植民地政策がおこなれていた1800年代のこと。バーサ・メイスンは中米のキューバの女性です。

キューバで財産を作り上げた人の娘なのですが、ひょっとしたらイギリス人とキューバ系のハーフかもしれません。

小説内では自分奔放な女性、という表現がありました。ラテン系の美女でした。

この女性どうも、統合失調症であるらしいのです。それも母親譲りとか。バーサの親、ロチャスターの父と兄が病気の症状を隠して、ロチェスターと結婚させました。

メイスン家はロチェスター家の家名が欲しかった。ロシェスター家は貴族でこそないものの、古くからある有名な地方豪族という身分でした。

またロチェスター家は家の格を守ため、お金が必要だった。メイソン家は大金持ちだった。と周囲の利害のための結婚でした。

結婚後、ロチェスターはバーサをイギリスの屋敷に連れ帰りました。兄が亡くなりロチェスター家の当主がエドワードになったためです。

しかしバーサは発病して荒れ始めました。ロデェスター家はバーサを屋根裏に閉じ込めました

当時では、精神を病んだ伴侶は家名の恥、という考えでした。昔の精神病棟を思い浮かべていただければいいかと思います。

現代から考えると、酷い差別です。

ただし、神の前で正式に結婚したのだから離婚はできない神の前で平等です。近代とはいえ、まだまだキリスト教の力が強かった時代が表れています。

「バーサ」はこの時代の暗い影です。植民地政策と女性を低く見る風潮でした。また精神の病を扱ったのも、当時の「精神病」に対する理解のなさを表しています。

一見、正しいことをしているように見えるロチェスターですが、妻を幽閉するなどの処遇はかなり酷い行為、被人道的と思えます。

シャーロット・ブロンテの場合と「嵐が丘」

この酷さは、シャーロットの妹、エミリー・ブロンテの「嵐が丘」に出てくるヒースクリフの像と重なります。一見似ていないのですが、二人ともここまで残酷になれるか・・と読者に思わせる人物です。

ヒースクリフは主人公の家に引き取られた浮浪児だったのですが、その家であまり良い扱いを受けなかったために、大人になって復讐をします。

どちらの姉妹の小説に出てくる男性はどちらも、残酷な一面を持ち合わせています。

ロチェスターの方が、一見すると紳士然としていて、その内面のどす黒さが表面化してこない分、タチが悪いと思えます。

シャーロット・ブロンテの弟が父の教育方針が合わなくて、苦しんだ挙句アルコール依存症になってしまいました。

厳しい父、アルコールに蝕まれる弟、この男性像がブロンテ姉妹に強烈な男性像を植え付けてしまったのかもしれません。

時代の意識が違うので、「ジェーン・エア」の内容を正しいか、そうでないかを、現代に生きる私たちは判断することはできません。人々の意識、感覚が全く違うのです。

シャーロット・ブロンテは、自分の生きる時代の間違いの部分を見出し、小説に書いた、言ってみれば、開拓者のような人物といえます。

今私たちができるのは、これを人類の意識の過ちと気づき、2度とその道を辿ってないけないということに尽きます。

「ジェーン・エア」の時代背景は

シャーロット・ブロンテが生きた時代はビクトリア女王の時代でした。1800年代中頃です。

小説は男性が書くもの、という固定観念があり、女性が書いただけでその作品は軽く見られていた時代です。

シャーロット・ブロンテも「ジェーン・エア」をカラー・ベルという名前で、エミリー・ブロンテも「嵐が丘」をエリス・ベルと男性名で発表しました。ただし、イニシャルだけは変えていないのがなんとなく自己主張のように見えます。

他にもジョージ・エリオットのように男性っぽい名前を使って作品を発表する女性もいました。

それでも女性の意識が徐々に高まっていった時代に変わりつつありました。イギリスの国王もビクトリア女王という女性になっていたこともその後押しになっていたでしょう。

ジェーン・エアは小説の人物ながら、自立し始めた女性を描いたものでした。シャーロット・ブロンテそのものがモデルです。

「ジェーン・エア」の小説の中では、実にジェーン・エアを通してシャーロット・ブロンテの思想が描かれています。

子供心から、孤児になったとはいえ、大人たちに媚びず、悪いことは悪いとはっきりと口にする。それが伯母などの大人たちから、子供らしくない、と嫌われる原因となります。

家庭教師の仕事についても、雇い主であるロチェスターに「自分だって一人前の人間である。人間としては決してあなた(主人)に負けるものではない」と堂々と語り、人間としての生き方をしっかりと示します。

当時の、貴族またはそれに準じる階級に使える者の言葉としては、罰を与えられるかもしれなのです。

作者シャーロット・ブロンテはジェーン・エアを自分と同じ中流階級の下の身分に属する人物として書きました。

家の財産で生活するのでなく、自分自身の手で稼がなけらばならない人物に書きました。

ある意味、ジェーン・エアは非常に理屈っぽい性格です。ひょっとしたら、こういう理屈っぽい女性は当時は、女らしくないと嫌われていたかもしれません。

それでもジェーン・エアはあえて時代に媚びようとするところが全く見られない人物です。

現代でこそ、女性も男性と同じように働くのが普通ですが、この時代上流階級であれば職業につきませんでした。

だからこそ中流階級にいるジェーン・エアは自分で仕事を探して働くのです。ロチェスターのもとを出て行き倒れにななろうとも、ジェーン・エアは生きるための補助を受けるのではなく、自立できる仕事を求めるのです。

結婚にしても、自分が好きになったからと自分の意思からでした。

一貫してブレない生き方です。

そこが「ジェーン・エア」の小説が今でも人気がある理由でしょう。

シャーロット・ブロンテの結婚と生涯?

シャーロット・ブロンテが生まれたのは牧師、パトリック・ブロンテの6人姉弟のうち3女として生まれました。母はシャーロットが子供の頃になくなり、父の姉に育てられました。

そして、寄宿学校に入学します。そこがローウッド慈善学校のモデルとなった学校でした。

卒業後は、父の牧師館に戻り、小説や詩を書き始めます。が再び表に出て、家庭教師として働き始めます。

やがて家庭教師を辞めてベルギーに留学しますが、留学先の教師に恋をします。その教師は既婚者だったため諦めて、イギリスに戻ります。

そして、姉妹で小説を書きます。合作も作りました。

小説は本名ではなく、ペンネームを使いました。

小説が有名になってくいると、本名を出すようになり、ロンドンに出て文壇とも交わるようになりました。

そして他にも小説を出し、その頃に副牧師のアーサー・ベル・ニコルズと結婚します。妊娠もするのですが、妊娠中毒でそのまま亡くなりました。38歳でした。

他の兄弟姉妹も早死にでした。38歳のシャーロットが一番長生きした方でした。

「ジェーンエア」あらすじを簡単に!

孤児のジェーン・エアは義理の伯母に引き取られますが、伯母一家からいじめを受けた挙句、寄宿学校に送られます。

その学校は慈善学校ですが、学校の理事長はは慈善家というより偽善家といった方がいい人物。学校に視察に来るのに、着飾った家族を連れてきて生徒に質素倹約を無理強いする始末です。

学校の衛生状態は悪く、伝染病が流行ります。理事長はその責任を取らされ、学校の環境は改善されます。

成長したジェーン・エアは学校を出て新たに裕福な上流階級の家庭で家庭教師になります。

はっきりと意見を言うジェーン・エアを、雇い主のロチェスターは気に入り、ジェーンの方もロチェスターに惹かれ、二人は結婚の約束をします。

が結婚式で「意義あり!」の声が上がり、実はロチェスターに妻がいたことが判明!

ロチェスターはすでにキューバの資産家の娘との結婚していました。実はその女性は精神の病にかかり、屋敷の奥に隠させられていました。

神の前に認められない重婚になるのを嫌って、ジェーン・エアは屋敷をひっそりと出ます。放浪の旅に出て、途中で倒れてしまいます。

ミュージカル「ジェーン・エア」ではジェーンが家をさるシーンの歌が大変力強く、ジェーンの大きな決意を感じさせます。ジェーン・エアが去るところで第1部が終了します。ミュージカルの力強さは、小説以上のものがあります。

倒れた先では親切な一家に、助けられました。そこは牧師が二人の妹と暮らしていました。

回復したジェーン・エアはその村で子供たち相手に教師として働き出します。常に自立した存在であろうとしたのです。

ですが助けてくれた、牧師とその兄弟が実は親戚だったのです。牧師一家を訪れた、ある弁護士が、その依頼主から財産の相続人を探していた関係からジェーンも一族だということがわかったのです。

ジェーンはある日、不思議な声を聞きました。それはどうも勘ではロチェスターが助けを呼んでいるかのように聞こえたのです。

そこでロチェスターの屋敷に戻ると、屋敷は焼け落ちて、怪我をして視力を失ったロチェスターに再会しました。

病気の妻が屋敷に火をつけたらしいのです。その妻は火災で亡くなりました。

そして、ジェーン・エアとロチェスターはここから新しい一歩を歩き出す、というところで話は終わります。

物語には様々な時代背景が現れています。この時代ならではの問題も見えてきます。ですが作品の中からジェーン・エアという人物が持つ不屈の精神が見えてきます。

全編を通じて一貫して描かれているのは、ジェーン・エアの自立。そして当然自分自身で考える力です。

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