ディズニーアニメ映画の物語はアンデルセン童話が原作のものが多いです。
アンデルセンは童話作家でしたが、どんな作家だったでしょう?
2023年、リトルマーメイドの実写映画が上映中です。
ただラストが原作と番うようです。
童話を通して、アンデルセンの人生、のぞいてみましょう。
「リトルマーメイド」原作者ハンス・クリスチャン・アンデルセン
ハンス・クリスティアン・アンデルセンは童話作家です。
アンデルセンは童話作家だけでなく詩人でもあります。
アンデルセンの生涯
1805年、デンマーク生まれです。
父は靴職人で生活は貧しいものでした。
しかし両親は愛情深く、幼いハンスに物語を教えてくれました。
ハンスの想像力はその時に育ちました。しかし同時に嘘をつく癖もあったようです。
反対に、嘘をつくのが上手いから小説が書けるのですけれどね。
また声がよく、歌っていることが好きな少年でした。
オペラ歌手になりたいと思い、デンマークの首都コペンハーゲンに出ますが、うまく行きません。
成長するにつれ、ボーイソプラノが出なくなり、思ったような役に着けなく、オペラ歌手の夢は挫折します。
バレエ学校、大学と次々学校を変え、小説を書きますが、どれも良い評価は得られず、長期の修行旅行に出ます。
しかし評価は得られないまま、故郷に帰りました。
アンデルセンの晩年
故郷に帰ってからは子供達相手に物語を語り聞かせをして過ごしていました。
執筆活動も行い、「子供のための童話集」を出版、ここから児童文学作家としての人気が出るようになります。
しかし飲酒の量が多く、肝臓ガンにかかり、1875年70歳でこの世を去りました。
アンデルセンの人気は、この頃非常に高まり、アンデルセンの死は国中に知られ、デンマークの王太子、外国の大使たち有名人が葬列に参加しました。
さらに1956年には「国際アンデルセン賞」という賞が作られアンデルセンは非常に人気ある作家となったわけです。
この賞は児童文学のノーベル文学賞と呼ばれています。
これまで自分はあんまり人に好かれていないと思っていた、ハンス・クリスチャン・アンデルセン。さぞやびっくりしたことでしょう。
アンデルセンの人生観
挫折の多い人生をおくった、ハンス・クリスチャン・アンデルセン。
挫折のせいか、自己評価の低い人物でした。
ゆがんだ性格の持ち主、なんてことも言われます。
挫折が多すぎたせいで、「人間は死んで、初めて本当に幸福になれる」という考えを持っていました。
その考えが、作品に出ています。
「人魚姫」など完全に、「死によってのみ幸福になれる」が現れています。
「リトルマーメイド」にはその考え方を全然見えてきません。
その点が薄っぺらくなって残念と思う反面、ハリウッド的な幸福という安心感を楽しむこともできます。
特にディズニーは、子供に楽しんでもらう作品を作っていますから。
「リトルマーメイド」の原作アンデルセン童話
2023年6月に、ディズニー映画「リトルマーメイド」が封切りになりました。
1989年にはアニメでしたね。
今の映画はアニメ版を実写に再現しました。
「リトルマーメイド」の原作はアンデルセン童話の「人魚姫」です。
大雑把にいうと、人間の王子に恋をした人魚のお姫様のお話です。
「リトルマーメイド」と「人魚姫」の違い
- 映画ではリトルマーメイドに「アリエル」、王子に「エリック」と名前が付けられていました。しかし原作、人魚姫にはありません。
- 魔女の人格がかなり違います。どちらの契約も人魚に足を与える代わりに声を失う、これは変わりありません。しかし「人魚姫」は人魚の舌を切り声を奪います。それに対して、アリエルは魔女の契約書にサインして声を失っていました。ここにアメリカの契約社会的な部分が出ています。ディズニーの方が人道的な感じです。舌を切る・・・考えただけでもゾッとします。しかし「人魚姫」の魔女の方がもう少し、人魚界の呪術師的な役割をしているみたいです。
- 人魚が、アリエルもですが、念願の足を得てからが違っています。「人魚姫」では彼女の足は歩くたびに刃物を踏んだかのように痛みます。それに対してアリエルには足の痛みはなく、むしろ新しい足という装備を楽しんでおり、踊り回っています。
- 人魚姫またはアリエルの声を取り上げ足を与えが魔女ですが、「リトルマーメイド」の魔女は海での支配力を持ちたくて、アリエルに契約を急がせるところがありました。一方、「人魚姫」の魔女は、姫に、人魚をやめてデメリットを話します。声を失うこと、足が痛くなること、もし王子からの愛が得られなければ死んでしまうと・・・アンデルセン童話の「人魚姫」の場合、この魔女は悪い魔女というより、海の長老のような役割に見えます。それに対して、「リトルマーメイド」の魔女、アースラは海の支配を計画する悪いやつです。
ここにヨーロッパの小説、アンデルセン童話の世界と、ディズニーのアメリカ的な正義と悪がはっきり分かれた世界観の違いが現れています。
「リトルマーメイド」と「人魚姫」のラストは
「リトルマーメイド」のアリエルはエリック王子と結ばれるハッピーエンドです。
ところが、「人魚姫」では、王子は人魚以外の女性と結婚して、その恋は破れます。
王子が海で難破に出会い、それを救ったのが人魚姫でした。
その後に王子の手当をした女性がいました。隣国に姫君でした。
王子はその姫に救われたと思い、結婚したのです。
一つだけ人魚が救われる道がありました。
それは王子を殺して王子の血を浴びれば人魚に戻れる、というのです。
しかし、人魚は王子を殺しはせず、王子と姫の幸せを祈ります。
恋が叶わなかった契約通り、人魚姫は死に、海の泡となります。しかしそれだけでとどまらず、空に登り風となって、何物にもとらわれない自由な身の上となりました。
人魚が王子を祝福したために得られた、最上の形がここに現れました。
涙がこぼれそうま結末ですが、ディズニーはハッピーに仕上げたのが、子供がみるアニメだからなのでしょうね。
そこにアメリカ人らしい、めでたい結末を望む性質も加わったのでしょう。
リトルマーメイドのモデルはアンデルセン自身?
リトルマーメイド(人魚姫)はいくら架空とはいえ、一応女性です。
それがなんで男性のハンス・クリスチャン・アンデルセンなのか?
「人魚姫」を書いた時、アンデルセンはちょうど恋をしていて片思いでした。
ある女性を愛していたのですが、その女性の歳が10歳ほども下だったので、告白を断念しました。
告白したいのに、話すわけには行かない。ちょうど人魚姫が声を失ったのと一緒です。
自分の容姿にも全く自信がありませんでした。
そこで、彼女にはもっと素晴らしい人がいるはず・・・・と思い身を引きました。
その想い、行動を物語にしたのです。ですから自分がモデルなのですね。
アンデルセン童話?「雪の女王」
これもまた大人気だったディズニーアニメ、「アナと雪の女王」もアンデルセン童話の「雪の女王」からとられています。
ところがこの童話は「アナ雪」とは全く違った話です。
「雪の女王」と「アナ雪」の共通点
どこが違うか、というより共通点が少なく、それを挙げる方が早いです。
- まず、「雪の女王」これは雪や氷を自在に操る力がある、この点は「アナと雪の女王」のエルサと同じです。
- 氷のお城、これは雪の女王としての住まいです。「アナ雪」では自分お力に目覚めたエルサが調子に乗って作ってしまいました。
- 凍りついた心。なのですが、凍りついた人物が違います。
- 「アナ雪」ではエルサの心が。アンデルセン作では、雪の女王が人の心を凍りつかせます。
- カイとゲルダ。登場人物の名前だけ一緒です。カイとゲルダは「アナ雪」では侍女と侍従だったのに対し、「雪の女王」では主要人物です。
- 雪の女王の改心。「アナ雪」でもエルサは本当の自分を取り戻します。
アンデルセン童話「雪の女王」と「アナ雪」の違うところ
どこが違う・・・といっても全くの別物の話なのです。同じなのは上記の6点のみです。
そこで「雪の女王」のストーリーの紹介を。
「雪の女王」、主人公カイとゲルダ
アンデルセンの童話「雪の女王」の主人公は二人です。
カイは男の子、ゲルダは女の子です。二人は仲良しでした。
ある日、カイの目の中にあるものが入り込み、それ以来カイは心の冷たい子になり、ゲルダの前から消え去ります。
村の物知りのおばあさんに聞くと、カイは雪の女王に気に入られてつれて行かれてしまった、と。
ゲルダはカイを探して救うことに決めました。
悪魔の鏡
カイの目に入ったのは雪に形を変えた、悪魔の鏡のかけら。
悪魔が作り出した鏡は、その鏡に写すものすべてをみにくく見せてしまう鏡でした。
この鏡は、時々小さく壊れてその破片が地上に降り、人にあたります。
当たった人は、かけらが心臓や目に入りその人を悪く変えてしまうのです。
そこで悪魔の鏡の破片が目に入った、カイが意地悪に変わってしまいました。
悪く変わったカイは雪の女王に連れ去られてしまったのでした。
ゲルダの活躍
ゲルダはなんとしてもカイを取り戻したい。
雪の女王のいる場所、氷の国に来ると、そこの住民は「雪の女王」を救ってくれ、と頼まれます。
昔は朗らかに笑う優しい人だったとか・・・その頃に女王に戻してほしいというのです。
ゲルダは、氷の宮殿に行くと、そこでカイを見つけます。
まだゲルダを嫌う様子のカイでしたが、ゲルダがカイを抱きしめ涙を流すと、その涙の暖かさで、カイに刺さった鏡の塊が溶け、カイは元に戻るのでした。
そこに怒り狂った、雪の女王がやってきます。
その時、ゲルダは、自分の村を出る時に村のおばあさんにもらった鏡を女王に掲げて、女王の姿を見せるようにすると、たちまち、優しい心の少女になりました。
ちょっと天照大神の伝説に似ている?
鏡に映ったのは、昔の女王、雪の女王になる前の優しい少女・・・
女王は本来の姿に戻ることができました。
「アナと雪の女王」に生き続ける要素
変化して悪となった女王。そしてまた元の姿に戻った・・・
この要素が「アナ雪」に生きています。
カイと女王を助けたゲルダの性質が、「アナ」となって「アナ雪」に現れています。
雪の女王は、悪役ですが、ゲルダの救いによって優しい女性に戻ることができました。
「アナ雪」のエルサも途中から悪になりますが、アナの想いによって救われます。
ここでアナは死にかけますが、エルサたちが力を合わせてアナの命を取り戻します。
この作品は、原作も「アナ雪」も喜ばしい結末になっています。
アンデルセン童話「雪だるま」
アンデルセン童話作者ハンス・クリスチャン・アンデルセンの書いた作品です。
冬に子供達の手によって作られた雪だるま。
その雪だるまは好奇心旺盛で、月とは何?太陽とは何?とじゃれてくる犬に聞きます。
犬は部屋を暖かくするストーブの気持ちよさについて、雪だるまに話しました。
雪だるまは、ストーブに憧れます。
そう、これこそ「アナ雪」の雪だるまオラフのモデルです。
「アナ雪」ではオラフは、アナやエルサに大事にされいつも一緒にいられる友達ですが、こちらの「雪だるま」では悲しい結末を迎えます。
雪だるまは暖かくなってもまだずっと庭に置かれたまま、やがて溶けていきます。
それでも誰もここに雪だるまがあったなんて思い出す人はいません。
ただ、犬だけは雪だるまがあんなに暖房に憧れのは、身体の芯に暖炉の火かき棒を使ったからだろうか?と思い出すのでした。
ここにもはっきりと楽しいエンディングを迎えないアンデルセンの経験が、入っています。
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